行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成25年38問

商法会社法

○:1.株主総会の招集手続が一切なされなかったが、株主が全員出席した総会において、取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合


問38

会社法上の公開会社(委員会設置会社を除く。)における株主総会の決議に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、株主総会の決議無効確認の訴えにおいて無効原因となるものはどれか。なお、定款に別段の定めはないものとする。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.株主総会の招集手続が一切なされなかったが、株主が全員出席した総会において、取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合

☓:2.代表権のない取締役が取締役会の決議に基づかずに招集した株主総会において、当該事業年度の計算書類を承認する決議がなされた場合

☓:3.取締役の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議がなされた場合

☓:4.株主に代わって株主総会に出席して議決権を代理行使する者を、当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合

☓:5.特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会に、当該株主が出席して議決権を行使し決議がなされた場合

解説

1.無効原因となる。
公開会社である株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない(会社法第331条2項)。
そして、株主総会等の決議について、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる(会社法第830条2項)。
したがって、本問は公開会社であるから、本肢の取締役の資格を当該株主に限定する旨の定款変更決議は決議の内容が法令に違反することになり、株主総会の決議無効の訴えにおいて無効原因となる。
なお、株主総会の招集手続が一切なされなくとも、株主が開催に同意して全員出席した場合は、当該株主総会決議は有効であるため(最判昭和60年12月20日)、本肢前半については、特に問題点とならない。
2.無効原因とならない。
株主総会の招集の決定は、会社にとって重要な業務執行の決定であり、その招集は業務執行であり、かつ、会社代表である側面を有する。
そして、取締役会設置会社においては、取締役会がその業務の決定をした上で(会社法第298条4項、362第2項1号)、代表取締役(会社法第349条)または代表執行役(会社法第420条)が会社を代表する。
したがって、取締役会設置会社においては、株主総会の招集の決定権は取締役会にあり、招集権者は代表取締役または代表執行役である。
そして、取締役会の決議を経ずになされた代表取締役(又は代表執行役)以外の者が招集した株主総会は、法的に有効な株主総会とは評価されず、決議不存在事由(会社法第830条1項)になるとされる(最判昭和45年8月20日)。
なお、取締役会の決議を経ずになされた代表取締役(又は代表執行役)が招集した株主総会決議は、招集手続の法令違反として、決議取消事由になるとされている(最判昭和46年3月18日)。
取締役会の決議を経ずになされた
代表取締役(又は代表執行役)以外の者が招集した株主総会決議決議不存在事由
取締役会の決議を経ずになされた
代表取締役(又は代表執行役)が招集した株主総会決議決議取消事由
3.無効原因とならない。
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない(会社法第332条1項)。
したがって、本肢の取締役の任期を、当該事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議は有効である。
なお、公開会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度にのうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない(会社法第332条2項)。
4.無効原因とならない。
株主は、代理人によってその議決権を行使することができるが(会社法第310条1項前段)、この代理人を株主に限定できるか否かにつき判例は、合理的な理由による相当程度の制限であれば許されるとした上で、代理人を株主に限る旨の定款規定は有効であるとしている(最判昭和43年11月1日)。
したがって、当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更の決議は有効である。
5.無効原因とならない。
特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会に、当該株主が出席して議決権を行使することは原則としてできないが(会社法第160条4項、156条)、このような特別利害関係人による議決権の行使によって著しく不当な決議がされた場合は、当該株主総会決議の取消事由となる(会社法第831条1項3号)。
したがって、本肢の株主が出席して議決権を行使しても、取消事由にはなり得るが、無効原因とはならない。


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