行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成25年44問

行政法


問44 Aが建築基準法に基づく建築確認を得て自己の所有地に建物を建設し始めたところ、隣接地に居住するBは、当該建築確認の取消しを求めて取消訴訟を提起すると共に、執行停止を申し立てた。執行停止の申立てが却下されたことからAが建設を続けた結果、訴訟係属中に建物が完成し、検査済証が交付された。最高裁判所の判例によると、この場合、①建築確認の法的効果がどのようなものであるため、②工事完了がBの訴えの訴訟要件にどのような影響を与え、③どのような判決が下されることになるか。40字程度で記述しなさい。

解答例

建築確認は、適法に工事を行える法的効果しかないため、訴えの利益が失われ却下判決が下される。(45字)

解説

②工事完了がBの訴えの訴訟要件にどのような影響を与え
訴訟要件とは、適法な訴えになるための要件のことであり、これを満たすことで本案審理に進むことができる。
訴訟要件には「処分性」「原告適格」「訴えの利益」「出訴期間」など色々あるが、本問では「訴訟係属中に建物が完成し、検査済証が交付された。」としているので、この点から仮に本問の題材になっている判例を知らなくとも、「訴えの利益」を選択したいところである。
「訴えの利益」(狭義の訴えの利益、訴えの客観的利益)とは、国家の裁判機関を用いて紛争を解決するに値するだけの利益・必要性のこと、つまり、その事案に本案判決を下すに値する利益があるかどうかということである。
訴訟当初から訴えの利益がないというケースもあり得るが、判例の多くは、事後的に失われるというケースで争われており、本問の「処分に関する工事が完成」したというのは、その典型的なものであるし、他にも、「都市計画法に基づく開発許可の取消訴訟中に工事が完了」(最判平成7年11月9日)、「違法建築物の除去命令の取消訴訟中に除去工事が完了」(最判昭和48年3月6日)した場合などで、訴えの利益が失われている。
したがって、②の解答には「訴えの利益が失われ」が妥当である。
③どのような判決が下されることになるか
前述のとおり訴訟要件は、色々種類があるが、その全部を満たしてないと適法な訴えとは言えないことになる。
そして、もし満たしてない場合は、不適法な訴えということになり、却下判決となる。
したがって、③の解答は、「却下判決が下される。」となる。
①建築確認の法的効果がどのようなものであるため
この質問が一番難易度が高く、ほとんど受験生が書けていなかった部分である。
この題材の判例は、次になるが
「建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」(最判昭和59年10月26日)
当該部分をしっかり暗記していた方は少ないであろうし、仮にうっすら覚えていても、それをまとめていれるのは、かなり苦労したものと思われる。
もっとも、工事完了によって訴えの利益が失われるのはなぜなのか?という逆側からの発想をすれば、近い解答にたどり着くことは可能であったと思われる。
すなわち、工事が完了すると訴えの利益が失われるのは、工事完了後に建築確認が取り消されても、建築物を取り壊す必要はなく、何ら是正はされないからである。
仮に、工事完了後に建築確認が取り消された場合であっても、何らかの是正がされるのであれば、工事が完了しても訴えの利益は失われないことになる。
つまり、建築確認と是正は繋がってないのである。
その遮断されている理屈が、「建築確認は、それを受けなければ工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎない」ということである。
そして、これを要約すると「建築確認は、適法に工事を行える法的効果しかないため、」となる。


この問題の成績

  • まだ、データがありません。


  • 試験過去問題の使い方

    平成30年までの行政書士試験問題の過去問を掲載しています。

    問題の解答ボタンの順番が、毎回ランダムで移動するので正解番号を覚えてしまうことを防止できます

    過去問ドリル使い方

    法令、一般知識のほか、法令につては(基礎法学、憲法<総論、人権、統治、財政>、行政法<行政手続法行政指導、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法>、民法<総則、物件、担保物件、債権>、商法、会社法、)などジャンルから選択するか、試験出題年度を選択してください。

    問題文章の後に選択肢が表示されるので、文章をタッチして解答してください

    解答画面では、過去6ヶ月間の解答について、履歴を表示するとともに、ユーザー全体の正解率を表示します。


    過去問を使った学習のヒント

    行政書士試験の本番時間は、3時間(180分) 法令46問、一般知識14問の合計60問が出題されます。

    1問あたり3分180秒で解答すれば間に合う計算になります。しかし、実際には、記述はもちろん、多肢選択、一般知識の文章読解問題は長い問題文を読んでいるだけで3分以上かかる場合もあるので180秒より速く解答する必要があります

    重要!毎日三時間用意する

    1問あたり100秒で解く(おおよそ半分の時間で一周できます)

    じゃあ残った時間は何をするのか?→解答を見る前に必ず見直すようにしてください。(回答時に自信がある問題、ない問題の目印をつけておくなど)


    過去問ドリルに取り組む前に

    一通りテキストを読み込んでから取り組みましょう。

    どの年度でもいいので初回60問といて、94点未満以下の場合はもう一度テキストを読み込む作業に戻りましょう

    300点満点中の180点取れれば合格ですので、目安として94点以上であれば、本格的に過去問ドリルに取り組んでみてください。