解答 行政書士試験 平成26年33問
民法債権
○:5.五つ
○:5.五つ
問33 債権の準占有者に対する弁済等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはいくつあるか。
ア 他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
イ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行がそのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
ウ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、債権の準占有者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。
エ 債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が債権の準占有者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
オ 債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.一つ
☓:2.二つ
☓:3.三つ
☓:4.四つ
○:5.五つ
解説
ア.妥当である。
最判昭37.8.21は、「債権者の代理人と称して債権を行使する者も民法四七八条にいわゆる債権の準占有者に該ると解すべき…」と判示している。
民法478条を適用するという判例である。つまり、債権者の代理人と称して債権を行使する者も、債権の準占有者である。
イ.妥当である。
定期預金の期限前の払戻しは、「合意解除」の性質をもつため、民法478条にいう「弁済」に当たるかどうかが問題となる。
最判昭41.10.4は、「定期預金契約の締結に際し、定期預金の期限前払戻しについて当事者間で期限前払戻しの場合における弁済の具体的内容が合意により確定している場合には、期限前払戻しは478条にいう『弁済』に当たる」としている」。
ウ.妥当である。
最判昭48、3、27は、「銀行が無記名預金について真実の預金者と異なる者を預金者と認定し、この者に対しその預金と相殺する予定のもと貸付けをし、その後相殺するときには、(民法)478条の類推適用がある」と判示している。
エ.妥当である。
受取証書が真正なものである場合、民法480条本文により、受取証書の持参人に対する弁済は有効となる。
しかし、受取証書が偽造されたものである場合にも民法480条本文を適用し、弁済者を保護すると、本来の債権者が害されすぎる。
そこで、偽造された受取証書の持参人に対する弁済が民法478条の要件を満たしている場合には、債権の準占有者に対する弁済として有効となると解されている。
なお、本肢では、証明責任が問題となるが、この論点については、行政書士試験では深入りする必要はない。
オ.妥当である。
最判昭61.4.11は、「二重に債権を譲渡された指名債権の債務者が、民法468条2項所定の対抗要件を具備した譲受人(優先譲受人)よりも後にこれを具備した劣後譲受人に対してした弁済についても民法478条の適用があり、債務者が、劣後譲受人が真正の債権者であると信じてした弁済につき『過失がなかった』(民法478条)というためには、優先譲受人の債権譲渡行為又は対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情があるなど劣後譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることが必要である」と判示している。
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