解答 行政書士試験 平成26年34問
民法相続
○:4.他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
○:4.他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
問34
生命侵害等に対する親近者の損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。
☓:2.他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。
☓:3.他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。
○:4.他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
☓:5.他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。
解説
1.妥当でない。
大判大15.2.16は、「被害者が即死した場合であっても傷害と死亡との間に観念上時間の間隔があるから、被害者には受傷の瞬間に損害賠償請求権が発生し、これが被害者死亡によって相続人に相続される」と判示している。
したがって、夫即死の場合も妻は損害賠償請求権を行使することができるから、本肢は妥当ではない。
2.妥当でない。
民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定している。
大判大15.2.16は、「民法711条所定の者で死亡被害者の相続人でもある者は、死亡被害者の取得する慰謝料請求権を相続する一方で、固有の慰謝料請求権も取得することになる」旨を判示している。
したがって、相続人固有の慰謝料請求権を行使することもできるから、本肢は妥当ではない。
3.妥当でない。
最大判昭42.11.1は、「他人の不法行為によって財産以外の損害を被った者は、損害の発生と同時に慰謝料請求権を取得し、被害者が死亡したときは、同人が生前に請求の意思を表明しなくても、相続人は当然に慰謝料請求権を相続する」と判示している。
この判例の前は、被害者の生前に請求の意思(どのようなものでもよい)を表明がなければ、被害者に慰謝料請求権が発生せず、相続人はそれを相続しない、と考えられていた。
いかし、本判例により、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続人は当然に慰謝料請求権を相続する、としたのである。
4.妥当である。
本肢では、不法行為による生命侵害があった場合に、民法711条が規定する、「被害者の父母、配偶者及び子」以外の者に固有の慰謝料請求権が認められるかが問題となる。
最判昭49.12.17は、「文言上711条に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうる」と判示している。
したがって、民法711条所定の者以外にも固有の慰謝料請求権が認められえるとする本記肢は妥当である。
なお、本判例の「被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者」は、被害者の夫の実妹であり、幼児期に罹患した脊髄等カリエスの後遺症により跛行顕著な身体障害等級二号の身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居し、同女の庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続が期待されていたところ、同女の突然の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたのである。
5.妥当でない。
最判昭33.8.5は、「近親者が傷害を受けた場合であっても、死亡にも比肩し得べき精神上の苦痛を受けたときは民法709条、710条に基づき自己の権利として慰謝料を請求し得る」と判示している。
したがって、両親に固有の慰謝料請求権が認められないとする点で、本肢は妥当ではない。
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