解答 行政書士試験 平成26年35問
民法親族
○:5.エ・オ
○:5.エ・オ
問35 利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。
イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。
ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。
エ 親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。
オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
☓:2.ア・エ
☓:3.イ・ウ
☓:4.ウ・エ
○:5.エ・オ
解説
ア.妥当でない。
最判昭49.7.22は、「民法826条2項にいう利益相反行為とは、行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指すのであり、その行為の結果現実にその子らの間に利害の対立を生ずるか否かは問わないとした上で、遺産分割協議は、その行為の客観的性質上相続人相互間に利害の対立を生ずるおそれのある行為と認められるから、利益相反行為に当たる」と判示している。
したがって、利益相反行為にあたらないとすることは妥当ではない。
イ.妥当でない。
最判昭35.7.15は、「親権者である母が子の継父である夫の債務のために子の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為に当たらない」と判示している。
したがって、利益相反行為にあたるとする本肢は誤っている。
ウ.妥当でない。
利益相反行為は無権代理と同じであり、その効果は本人に帰属しない。しかし、子が能力者になった後に追認する余地がある(民法113条1項)。
本肢において、子が成年に達した後に追認をした場合、親権者から子に対する財産の譲渡が成立したときに遡ってその効力を生じる、とするのが、判例(最判昭46.4.20)の見解である。
したがって、本肢は成年に達した後の追認は無効であるとする点で、妥当ではない。
エ.妥当である。
子が主債務者である場合、親権者が子の不動産に抵当権を設定する行為は、外形的・客観的に子と親権者の利益は相反しないため利益相反行為に当たらないとするが、親権者が自己の債務のために子の不動産に抵当権を設定する行為は、仮に親権者が借受金を子の利益となる用途に充当する意図を有していたとしても、利益相反行為に当たるとしている、というのが判例(最判昭37・10.2)の見解である。
オ.妥当である。
最判昭43.10.8、「第三者の金銭債務について、親権者が自ら連帯保証をするとともに子の代理人としてした連帯保証債務負担行為及び抵当権設定行為は、利益相反行為に当たる」と判示している。
その理由として、「債権者が抵当権の実行を選択するときは、抵当不動産における子らの持分の競売代金が弁済に充当される限度において親権者の責任が軽減され、その意味で親権者が子らの不利益において利益を受け、また、債権者が親権者に対する保証責任の追究を選択して親権者から弁済を受けるときは親権者と子らの間の求償関係及び子の持分の上の抵当権について親権者による代位の問題が生ずる等のことが連帯保証ならびに抵当権設定行為自体の外形から当然予想されるということ」を挙げている。
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