解答 行政書士試験 平成26年36問
商法
○:2.支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。
○:2.支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。
問36
商法上の支配人に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならず、この登記の完了により支配人も商人資格を取得する。
○:2.支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。
☓:3.支配人の代理権の範囲は画一的に法定されているため、商人が支配人の代理権に加えた制限は、悪意の第三者に対しても対抗することができない。
☓:4.支配人は、商人に代わり営業上の権限を有する者として登記されるから、当該商人の許可を得たとしても、他の商人の使用人となることはできない。
☓:5.商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、支配人として選任されていなくても、当該営業所の営業に関しては、支配人とみなされる。
解説
1.誤り。
確かに、商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない(商法22条前段)。
しかし、支配人とは商人によってある営業所の営業・事業の主任者として選任された商業使用人であって独立した商人ではない。
したがって、本肢は、支配人の選任登記が支配人も商人資格を取得するとしている点で誤っている。
2.正しい。
商法21条2項は、「支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。」と規定している。
支配人とは、商人によってある営業所の営業・事業の主任者として選任された商業使用人であり、その代理権の包括性(同法21条1項参照)から、支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる(商法21条2項)とされている。
3.誤り。
商法21条3項は、「支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定している。
このように、商法は善意の第三者のみを保護の対象としており、代理権の制限につき悪意の第三者は保護の対象となっていない。
したがって、本肢は、悪意の第三者に対しても対抗することができないとしている点で、誤っている。
なお、このように解する根拠としては、商法21条3項の趣旨が第三者における支配人の権限(の包括性)に対する期待保護という点にあることから代理権の制限につき悪意の第三者は保護の必要がないために保護対象から除外されているものと考えられる(一種の権利外観法理的規定)。
4.誤り。
支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない(商法23条1項)。
①自ら営業を行うこと
②自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること
③他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること
④会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること
本肢は上記③に該当する。
そして反対解釈から、「商人の許可を受け」れば、支配人が同法23条1項各号所定の行為を行い得る余地を認めている。 したがって、本肢は、商人の許可を得たとしても他の商人の使用人となることはできないとしている点で、誤っている。
なお、このように解する根拠としては、商法23が支配人を商人のための専心・忠実な職務遂行者とする精力分散防止義務の現れ(商人保護の趣旨)であることから、商人が許可する場合には例外を認めても良いためだと考えられる。
5.誤り。
商法24条本文は、「商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。」と規定している。
このように、同条本文所定の使用人に対して一切の裁判外の行為をする権限を擬制するが、支配人であることまで(一切の裁判上の行為をする権限を有することまで)は擬制していない。
したがって、本肢は、当該営業所の営業に関しては支配人とみなされるとしている点で誤っている。
この問題の成績
まだ、データがありません。