解答 行政書士試験 平成26年59問
一般知識 文章理解
○:3.実際よりも高めに聞き手の理解度を見積もってしまう傾向が話し手にはあること
○:3.実際よりも高めに聞き手の理解度を見積もってしまう傾向が話し手にはあること
問59 次の「話し手の意識」について分析した本文があるが、空欄に入る文として適当なものは、1~5のうちどれか。
話し手から見てもあいまいな発話を例に、話し手の特徴をあぶりだしてみたい。
「警官は自転車で逃げた犯人を追いかけた」
(警官が自転車で追いかけたのか、犯人が自転車で逃げたのか)
このような発話は、言い方によってはあいまい性が消えてしまうことがある。たとえば次の①のように区切って言えば警官が自転車に乗っていたと解釈するだろうし、②のように区切って言えば犯人が自転車に乗っていたと解釈することになるだろう。もうひとつの解釈が思いつかないかぎり、聞き手は文そのもののあいまい性には気づきにくくなるはずだ。
①「警官は自転車で 逃げた犯人を 追いかけた」
②「警官は 自転車で逃げた犯人を 追いかけた」
ここで考えたいのは、このようなあいまいな要素のある発話を話し手が使ってしまった場合、話し手は聞き手にわかりやすいような言い方を実際にしているのかどうかということである。話し手はそのつもりでも、聞き手には実際はわかっていないことが少なからずあることを示したおもしろい実験がある。
この実験の参加者は、話し手役か聞き手役のどちらかを演じた。話し手役の参加者は「警官は自転車で逃げた犯人を追いかけた」のようなあいまいな文を声に出して読み、聞き手役の参加者がそれを聞いた。「警官は自転車で逃げた犯人を追いかけた」の文を声に出して読む前に、話し手役はこの文があいまいであることの説明と、(イ)あるいは(ロ)のような、発話解釈に必要な文脈になりうる情報を与えられ、それを黙読することができた。
(イ)「犯人はバイクで逃走したが、運よく警官はそばに自転車があるのに気がついた」
(ロ)「犯人は女性から自転車を無理やり奪った。すぐに警官は車に乗り込んだ」
この実験の目的は、聞き手役が話し手の意図した解釈をどの程度理解できたか、また聞き手役の理解度を話し手がどの程度期待していたかということを調べることであった。聞き手役が実際に話し手役の意図したとおりに解釈できた比率は66パーセントという結果だった。これを高く見るか低く見るかにもよるが、文のあいまい性を認識している話し手は、聞き手には文脈に合った意味だけが伝わるように言い方を工夫しているはずなのに、聞き手の理解度は100パーセントにはほど遠かったことは示唆的である。その一方、話し手役が予測した聞き手役の理解度はそれよりも有意に高く、76パーセントだった。 が示されたと言えるだろう。
(松井智子「子どものうそ、大人の皮肉-ことばのオモテとウラがわかるには」より)
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.基本的に話し手の表現力の貧しさが目立つということ
☓:2.話し手には相手に伝えようとする強い意志と話し方の技術が必要であること
○:3.実際よりも高めに聞き手の理解度を見積もってしまう傾向が話し手にはあること
☓:4.総じて聞き手の理解度はあいまいな表現に対し太刀打ちできない程度のものであったこと
☓:5.残念ながら話し手と聞き手のコミュニケーション成立の実現性については悲観的にならざるを得ないこと
解説
空欄には、「話し手はそのつもりでも、聞き手には実際はわかっていないことが少なからずあることを示したおもしろい実験」の結果、示されたことが入る。
まず、「この実験の目的は、聞き手役が話し手の意図した解釈をどの程度理解できたか、また聞き手役の理解度を話し手がどの程度期待していたかということを調べることであった」とされている。
そして、この実験の結果、「聞き手役が実際に話し手役の意図したとおりに解釈できた比率は66パーセントという結果だった」という。
これに対して、「話し手役が予測した聞き手役の理解度はそれよりも有意に高く、76パーセントだった」というのである。
したがって、この結果から、「話し手役が予測した聞き手役の理解度」は「聞き手役が実際に話し手役の意図したとおりに解釈できた比率」よりも、10パーセント以上高かったということがわかるから、肢3のように「実際よりも高めに聞き手の理解度を見積もってしまう傾向が話し手にはあること」が示されたといえる。
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