行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成28年29問

民法

○:3.イ・オ


問29 A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア DがA、BおよびCに無断で甲土地上に乙建物を建てて甲土地を占有使用している場合、Aは、Dに対し、単独で建物の収去および土地の明渡しならびに土地の占拠により生じた損害全額の賠償を求めることができる。
イ Eが、A、BおよびCが共有する乙建物をAの承諾のもとに賃借して居住し、甲土地を占有使用する場合、BおよびCは、Eに対し当然には乙建物の明渡しを請求することはできない。
ウ Fが賃借権に基づいて甲土地上に乙建物を建てた場合において、A、BおよびCが甲土地の分割協議を行うとするときは、Fに対して分割協議を行う旨を通知しなければならず、通知をしないときは、A、BおよびCの間でなされた分割の合意は、Fに対抗することができない。
エ Aが乙建物を所有し居住している場合において、Aが、BおよびCに対して甲土地の分割請求をしたときは、甲土地をAに単独所有させ、Aが、BおよびCに対して持分に相当する価格の賠償を支払う、いわゆる全面的価額賠償の方法によって分割しなければならない。
オ A、BおよびCが乙建物を共有する場合において、Aが死亡して相続人が存在しないときは、Aの甲土地および乙建物の持分は、BおよびCに帰属する。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

☓:2.ア・ウ

○:3.イ・オ

☓:4.ウ・エ

☓:5.エ・オ

解説

ア.誤り。
前段は正しいが、後段が誤り。
前段の「建物の収去及び土地の明渡し」であるが、判例によると、共有物の使用を妨害する者に対して、単独でその妨害の排除を求めることができる(大判大正10年7月18日、持分権に基づく不法占有者からの引渡請求についても同趣旨の判例(大判大正7年4月19日)がある)。妨害をやめさせること、不法占有者から引渡を受けることは保存行為に当たるからである。
一方で後段の「損害全額の賠償」であるが、判例によると共有にかかる土地が不法に占有されたことを理由として、共有者の全員又はその一部の者から不法占有者に対してその損害賠償を求める場合には、共有者は、それぞれその共有持分の割合に応じて請求をすべきものであり、その割合を超えて請求をすることは許されないとしている(最判昭和51年9月7日)。金銭債権たる損害賠償請求権は可分なものであるし、各共有者に共有物のすべての経済的価値が帰属しているわけではないからである。
したがって、共有者Aは損害全額の賠償を求めることができるとしている本肢は誤り。
イ.正しい。
共有物の使用に関しての決定は管理行為にあたる。では共有者間の協議なくして、特定の共有者から承諾を得て、共有物を使用するにいたる者に対し、他の共有者は当然に明け渡しを請求できるのであろうか。
判例は、共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、~中略~、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は当該第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当であるとしている(最判昭和63年5月20日)。協議がないとしても、各共有者は持分に基づいて共有物を使用する権利があり、これは共有者から承諾を得て共有物を使用する者にも当てはまるといえるのである。
したがって、Aの承諾のもとに賃借して居住していたEに対し、BおよびCは当然には乙建物の明渡しを請求することができないとする本肢は正しい。
ウ.誤り。
民法によると、共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができ、参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができないとされている(民法第260条1項2項)。共有物について、権利を有する者等を保護するための規定である。
共有物を賃借し建物を所有する者は第260条1項の「共有物について権利を有する者」である。
しかしながら、その者に分割協議を行う旨を通知しなければいけない根拠が条文上になく、通知の義務はない。
したがって、通知を義務とし、また、通知を欠いた場合に、共有物について権利を有する者であるFに対抗できないとする本肢は誤り。
エ.誤り。
協議による共有物の分割は、①現物分割、②代金分割、③価格賠償のいずれもが認められる。そもそも協議による分割であるならば、私的自治の原則が合致し、共有物分割の仕方について制限はないのである。裁判による共有物分割を定めた民法第258条においても、価額賠償によらなければいけないわけではないことが読み取れる。
したがって、全面的価額賠償によらなければいけないとする本肢は誤りである。
なお、全面的価格賠償とは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法である。
以下、補足である。 裁判による共有物分割は、民法第258条に規定されている。第2項を読むと、裁判による共有物分割は現物分割又は代金分割の方法によって行うように読める。
しかしながら判例は、裁判による共有物分割においても、全面的価額賠償を認めている点には注意を要する(最判平成8年10月31日)。結局のところ共有関係が整理され、当事者が納得する形になるのであれば共有物分割の目的は達成されるからである。
オ.正しい。
民法によると、共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する(民法第255条)。
したがって、Aが死亡して相続人が存在しない場合、Aの持分はBおよびCに帰属するとする本肢は正しい。


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