解答 行政書士試験 平成29年19問
行政事件訴訟法
○:5,仮の差止めについては、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、裁判所は、これを命ずる決定をすることができない。
○:5,仮の差止めについては、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、裁判所は、これを命ずる決定をすることができない。
問19
行政事件訴訟法の定める仮の差止めに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.仮の差止めの申立てについては、執行停止における内閣総理大臣の異議の規定は準用されていない。
☓:2,仮の差止めの申立てがなされた場合、行政庁は、仮の差止めの可否に関する決定がなされるまで、対象とされた処分をすることができない。
☓:3,仮の差止めは、処分がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、申立てにより、または職権で裁判所がこれを命ずる。
☓:4,仮の差止めは、緊急の必要があるときは、本案訴訟である差止めの訴えの提起に先立って、申し立てることができる。
○:5,仮の差止めについては、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、裁判所は、これを命ずる決定をすることができない。
解説
1.誤り
仮の差止めは、処分の執行停止と同様の機能を有するため、行政事件訴訟法37条の5第4項で内閣総理大臣の異議を定める同法27条を準用している。
2.誤り
仮の差止めは、単独の訴訟類型ではないため、その前提となる差止め訴訟を提起してなければ申立てることはできない(行政事件訴訟法37条の5第2項)。本肢のように仮の差止めの申立てがなされた場合、行政庁は仮の差止めの可否に関する決定がなされるまで、対象とされた処分をすることができないとはいえない。
また、仮の差止めは、処分の執行停止と同様の機能を有するため、執行停止の規定の多くを準用しており、また、準用してない部分についてもその趣旨自体は類似した規定となっている(行政事件訴訟法37条の5第2項)。注意が必要な部分としては、執行停止、差止訴訟では「重大な損害」という表現を使用しているが、仮の差止めの要件の一つである「償うことのできない損害」とは、一般に「重大な損害」よりも損害の回復困難の程度が著しいと解されており、その要件は厳しいものとなり、かなりハードルは高い(肢3参照)。
3.誤り
仮の差止めは、取消訴訟の執行停止と同様に申立てが必要であり、裁判所が職権ですることはできない(行政事件訴訟法37条の5第2項)。
なお、裁判所が、仮の差止めを命ずることができるのは、次の要件をすべて満たした場合である。
手続要件 差止め訴訟が提起されていること
原告が申立てること
積極要件 処分等がされることによって生ずる償うことのできない損害を避けるため
緊急の必要があること
本案について理由があるとみえること
消極要件 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと
4.誤り
仮の差止めは、単独の訴訟類型ではないため、その前提となる差止め訴訟を提起してなければ申立てることはできない(行政事件訴訟法37条の5第2項)。
5.正しい
仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない(行政事件訴訟法37条の5第3項)。
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