行政書士試験 平成22年59問
一般知識 文章理解
問59 次のア~カの記述のうち、本文の空欄[ A ]・[ B ]に当てはまるものの組合せとして適切なものはどれか。
リタイアと引退の言葉の違いは、定年退職者を送る際に、「おめでとう」という欧米と、「長い間、お疲れ様でした」という日本の精神的風土の違いを表している。「おめでとう」のあとには、「これからは、自由に好きなことができるね」という言葉が隠されているし、「長い間・・・・」の後に続く言葉は、どちらかというと「どうぞ、これからはのんびりして下さい」に近いだろう。
しかし、団塊の世代が定年を迎えようとしている現在、消極的意味合いの「引退」から積極的な「リタイア」への意識転換が進みつつあるように思う。
昭和24年生まれの私は、団塊の世代に属する。団塊の世代は、焼野原の中に生まれた「戦後日本」の復興期から成長期、そして成熟期に至るまでを、自分の年齢と重ね合わせながら生きてきた。子供の頃の日本は貧しく、私たちは、家族を養うために必死に働く親の背中を見ながら育った。そして東京オリンピックに象徴される高度成長期は、同時に私たちの青春期であり、大人になってからは、豊かな時代の中で、さまざまな新しい流れを作り出してきた。
「アリとキリギリス」の寓話に譬えれば、戦後日本の復興と成長の立役者として働きに働いた私たちの親は、アリであった。というか、アリであることしかできなかった。一方、豊かさが当たり前になり、不足を知らず、夏に無邪気に遊べる私たちの子供は、自分がキリギリスであることすら気付かないだろう。幼いときに親の苦労を見て育ちながらも、その後の豊かさに慣れてしまった私たちは、残念ながらキリギリスになりきることもできないし、とはいえアリに戻ることもできない。
アリである私たちの親にとっては、長年勤め上げての引退しか考えられなかった。それに対し、キリギリスとして遊ぶことを知り、かつアリの性向も残し持っている私たちは、きっと遊び心と真面目さを織り交ぜて、今までとは違ったリタイアのあり方を模索するだろう。
今になって振り返ってみれば、今回の本で書いた、リタイアを決めた40歳から14年間の精神的および経済的歩みは、まさしく[ A ]か、[ B ]の人生記録である。積極的なリタイアを考えている40代以降の人たちに、そのような私の試みが少しでも参考になればと思う。
(出典 桐野裕 「『引退』から『リタイア』へ」より)
ア、キリギリスとなったアリ
イ、キリギリスになれないアリ
ウ、キリギリスになりたいアリ
エ、アリのようなキリギリス
オ、アリがゆめのキリギリス
カ、アリをきらうキリギリス
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