解答 行政書士試験 平成29年30問
物権
○:3,Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
○:3,Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
問30
Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
☓:2,Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
○:3,Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
☓:4,Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
☓:5,Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間
解説
民法162条と187条の理解を試す問題である。条文はそれぞれ次の通りである。
民法162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
民法187条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
本問は、Aが時効取得できない場面について問うている。逆にいえば、Aが時効取得できる場面は正解にはならない。
Aが時効取得するためには、自己の占有で民法162条の要件を満たすか、あるいは自己の占有と前占有者であるBの占有をあわせて(つまり民法187条を用いて)民法162条の要件を満たすか、いずれかである必要がある。以下において検討する。
1.時効取得できる。
Aは自己の占有のみを主張することができる(民法187条1項参照)のだから、Aが占有開始の時に善意無過失であり、10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有すれば、甲不動産を時効取得できる(民法162条2項)。
したがってAは時効取得できる。
なお、本肢の解説にあるように、時効による取得をするためには10年や20年の占有期間以外にも、「所有の意思」等の要件が必要であるが、本問ではそれは問われていないと考えられるため、占有期間以外の要件は肢2以下について割愛する。
2.時効取得できる。
Aは自己の占有のみならず、前占有者の占有をも併せて主張することができるが、その場合には前占有者の瑕疵をも承継してしまう(民法187条1項2項参照)。
Bが悪意なのであるから、甲不動産の時効取得のためにBの占有を併せて主張する場合は、20年間の占有が必要である(民法187条1項2項、162条1項参照)。
AとBの占有を併せれば、ちょうど20年ある。
したがってAは時効取得できる。
3.時効取得できない。
Aが自らの占有のみを主張して甲不動産を時効取得するためには、10年間の占有が必要である(民法187条1項、162条2項参照)。
Aが前占有者であるBの占有を併せて主張して甲不動産を時効取得するためには、20年間の占有が必要である(民法187条1項2項、162条1項参照)。
本肢の場面では、A自身の占有は5年しかなく、Bの占有と併せても10年しかない。
したがってAは時効取得できない。
4.時効取得できる。
Aは自己の占有のみならず、前占有者の占有をも併せて主張することができるが、その場合には前占有者の瑕疵をも承継してしまう(民法187条1項2項参照)。
そこで問題になるのは、前占有者の占有が善意無過失によるものであった場合に、悪意であるAは「善意無過失」による占有を承継し、10年で時効取得が認められるのであろうか(民法162条2項参照)という点である。
ここで、条文には「前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する」とある。その瑕疵を「も」承継するのであるから、瑕疵がないのであれば「瑕疵がない」という占有を承継する。
したがってAは時効取得できる。
5.時効取得できる。
Aは自己の占有のみならず、前占有者の占有をも併せて主張することができるが、その場合には、前占有者の瑕疵の有無を承継してしまう(民法187条1項2項参照、肢4の解説参照)。
Bが占有開始時に善意無過失なのであるから、甲不動産の時効取得のためにBの占有を併せて主張する場合は、10年間の占有で足りる(民法187条1項2項、162条2項参照)。
AとBの占有の期間を併せれば11年である。
したがってAは時効取得できる。
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