解答 行政書士試験 平成28年10問
行政事件訴訟法
○:2.ア・ウ
○:2.ア・ウ
問10 次のア~エの記述のうち、法令および最高裁判所判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。
ア 行政処分の取消訴訟において、処分取消判決が確定したときであっても、同一処分に関する国家賠償訴訟において、被告は、当該処分を行ったことが国家賠償法上は違法ではないと主張することは許される。
イ 行政処分が無効と判断される場合であっても、その効力の有無を争うためには抗告訴訟を提起する必要があり、当事者訴訟や民事訴訟においてただちに行政処分の無効を主張することは許されない。
ウ 行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするに当たっては、あらかじめ当該行政処分について取消訴訟を提起し、取消判決を得ていなければならないものではない。
エ 行政処分の違法性を争点とする刑事訴訟において被告人が処分の違法を前提とする主張をする場合には、あらかじめ当該行政処分について取消訴訟を提起し、取消判決を得ておかなければならない。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
○:2.ア・ウ
☓:3.イ・ウ
☓:4.イ・エ
☓:5.ウ・エ
解説
ア.正しい
取消訴訟における「違法」と国家賠償訴訟における「違法」は性質が異なるとしている(違法性相対説)。判例は、国家賠償法上の違法は、当該行為が特定規範に反するか否かのみならず、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたか否かによって判断されるとしている。取消訴訟が認められる「違法」と、国に対して損害賠償請求ができる「違法」は異なるとする立場であるから、本肢は正しい。
イ.誤り
争点訴訟(行政事件訴訟法第45条)は、民事訴訟の中で、行政庁の処分・裁決の効力・存否が前提問題として争われる訴訟である。また、当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条)は、行政処分が無効であることを前提に法律関係の確認を求める訴えの類型が含まれており、これらの訴訟を起こす前提として抗告訴訟を提起する必要はない。
ウ.正しい
判例は、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない」としている(最判昭和36年4月21日)。
エ.誤り
刑事訴訟はその特殊性から公定力を持ち出すべき領域ではないと考えられる。したがって、あらかじめ取消訴訟を提起する必要はない。
したがって、正しいものの組合せはアとウであり、正解は2である。
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