行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成26年17問

行政事件訴訟法

○:1.一つ


問17 原告適格に関する最高裁判所の判決についての次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア 公衆浴場法の適正配置規定は、許可を受けた業者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図まで有するものとはいえず、適正な許可制度の運用によって保護せらるべき業者の営業上の利益は単なる事実上の反射的利益にとどまるから、既存業者には、他業者への営業許可に対する取消訴訟の原告適格は認められない。
イ 森林法の保安林指定処分は、一般的公益の保護を目的とする処分であるから、保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を侵害された者であっても、解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格は認められない。
ウ 定期航空運送事業に対する規制に関する法体系は、飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするものにとどまるものであり、運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者であっても、免許取消訴訟を提起する原告適格は認められない。
エ 自転車競技法に基づく場外車券発売施設の設置許可の処分要件として定められている位置基準は、用途の異なる建物の混在を防ぎ都市環境の秩序有る整備を図るという一般的公益を保護するにすぎないから、当該場外施設の設置・運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者であっても、位置基準を根拠として当該設置許可の取消しを求める原告適格は認められない。
オ (旧)地方鉄道法に定める料金改定の認可処分に関する規定の趣旨は、もっぱら、公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではないから、通勤定期券を利用して当該鉄道で通勤する者であっても、当該認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということはできず、認可処分の取消しを求める原告適格は認められない。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.一つ

☓:2.二つ

☓:3.三つ

☓:4.四つ

☓:5.五つ

解説

ア.誤り。
最判昭37.1.19は、「公衆浴場法が許可制を採用し前述のような規定(配置規制-距離制限)を設けたのは、主として『国民保健及び環境衛生』という公共の福祉の見地から出たものであることはむろんであるが、他面、同時に、無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有するものであることは否定し得ないところであって、適正な許可制度の運用によつて保護せらるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解するを相当とする。」と判示している。
したがって、本肢は、公衆浴場の既存業者に原告適格が認められないとしている点で、誤っている。
イ.誤り。
最判昭57.9.9は、「『直接の利害関係を有する者』は、保安林の指定が違法に解除され、それによつて自己の利益を害された場合には、右解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格を有する者ということができる」と判示している。
したがって、本肢は、保安林の指定解除により自己の利益を侵害された者であっても、原告適格が認められないとしている点で、誤っている。
ウ.誤り。
最判平元.2.17は、定期航空運送事業に対する規制に関する法体系は、「単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができる」としている。
したがって、本肢は、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者の原告適格を認めない点で、誤っている。
エ.誤り。
最判平21.10.15は、「位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、…業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有する」と判示している。
したがって、本肢は医療施設等の開設者に原告適格が認められないとしている点で、誤っている。
オ.正しい
最判平元.4.13は、「たとえ上告人らがD鉄道株式会社の路線の周辺に居住する者であつて通勤定期券を購入するなどしたうえ、日常同社が運行している特別急行旅客列車を利用しているとしても、上告人らは、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によつて自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということができず、右認可処分の取消しを求める原告適格を有しない…。」と判示している


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