行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成26年28問

民法総則

○:1.AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。


問28

Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

☓:2.AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。

☓:3.AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない。

☓:4.AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

☓:5.Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない。

解説

1.妥当である。
AはBに対する畏怖の状態が続いているから、「取消しの原因となっていた状況が消滅した後」とはいえず、(124条1項)、「追認をすることができる時」(126条前段)になっていない。
また、行為の時から10年経過しているだけで、20年も経過していない(同法126条後段)。よって、AはBに対する意思表示につき、強迫を理由に取り消すことができる(96条1項)。
※参考
民法96条1項「…強迫による意思表示は、取り消すことができる。」
同法124条1項「追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。」
同法126条「取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」
2.妥当でない。
最判昭49.9.26は、「(善意の)第三者の範囲は、…必ずしも、所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は、見出し難い。」としている。
したがって、本肢は、対抗要件を備えていなければならないとしている点で、妥当ではない。
なお、保護されるためには、無過失まで必要か否かに関しては判然としない。
3.妥当でない。
民法96条2項は、「第三者が詐欺を行った場合」「相手方がその事実を知っていたときに限り」、意思表示の取消しを認めているが、強迫については何ら規定していない。
これを反対解釈すると、第三者が強迫を行った場合には、常に意思表示を取り消すことができる、と考えられる。
したがって、本肢は、取り消すことができないとしている点で、妥当ではない。
4.妥当でない。
民法96条2項は、「第三者が詐欺を行った場合」「相手方がその事実を知っていたときに限り」意思表示の取消しを認めている。
つまり、取消しについて、無過失まで要求している訳ではない。
したがって、本肢は、知らなかったことにつき過失があったときは、取り消すことができるとしている点で、妥当ではない。
5.妥当でない。
民法21条は、「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」と規定している。
詐術を用いたか否かについて最判昭44.2.13は、「単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもって、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない。」としている。
通常、制限行為能力者であることは積極的には言わないであろうことが考えられるから、黙秘をもって詐術としてしまうと、本規定の意味が殆どないことになる。
したがって、本肢は、黙秘は詐術にあたるとしている点で、妥当ではない。


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