解答 行政書士試験 平成24年16問
行政事件訴訟法
○:2.取消判決は第三者に対しても効力を有すると規定されているが、この規定は、無効確認訴訟には準用されていない。
○:2.取消判決は第三者に対しても効力を有すると規定されているが、この規定は、無効確認訴訟には準用されていない。
問16
処分取消訴訟と処分無効確認訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.取消訴訟、無効確認訴訟ともに、行政上の法関係の早期安定を図るという観点から、出訴期間の定めが置かれているが、その期間は異なる。
○:2.取消判決は第三者に対しても効力を有すると規定されているが、この規定は、無効確認訴訟には準用されていない。
☓:3.執行停止について、取消訴訟においては執行不停止原則がとられているが、無効確認訴訟においては執行停止原則がとられている。
☓:4.取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができないが、この制限規定は、無効確認訴訟には準用されていない。
☓:5.無効確認訴訟は、取消訴訟の出訴期間経過後において、処分により重大な損害を生じた場合に限り提起することができる。
解説
出題ミスにより、没問。選択肢4も正解。
1.誤り。
取消訴訟では、行政上の法関係の早期安定を図るという観点から、出訴期間の定めが置かれている(行政事件訴訟法第14条)。
しかし、無効等確認訴訟では、取消訴訟の出訴期間に関する規定を準用しておらず、また、独自での規定も無いため、無効等確認訴訟は出訴期間の制限を受けない(行政事件訴訟法第14条1項、38条)。
無効確認訴訟は、行政行為の無効を前提に提訴するものであり、無効な行政行為には、その効力として公定力が生じず、不可争力も生じないため、出訴期間の制限を受けないようにしたものである。
2.正しい。
無効等確認の訴えでは、「第三者効」の規定は準用しておらず、条文上は、無効確認判決に第三者効はない(行政事件訴訟法第32条1項、38条参照)。
もっとも、学説上は、準用を肯定するのが通説である。
その理由としては、執行停止では第三者に対して効力があるのに(行政事件訴訟法38条は、32条2項を準用している)、無効確認判決が下されるとその効力が失われるのでは、不均衡であるからと説明される。
また、判例も特例法のものではあるが、無効確認判決に第三者効を認めている(最判昭和42年3月14日)。
3.誤り。
行政事件訴訟法第25条1項は「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」として、執行不停止(の)原則を規定している。
そして、無効確認訴訟でもこの規定を準用している(行政事件訴訟法第38条3項)。
したがって、無効確認訴訟も執行不停止原則である。
4.正しい。
取消訴訟では、「自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。」として、取消し理由を制限しているが(行政事件訴訟法10条1項)、無効確認訴訟では準用していない(行政事件訴訟法第38条参照)。
もっとも、学説上は、準用を認めるべきとする考え方が有力であり、下級審裁判例ではいくつか準用を認めた例もある(福井地判平成12年3月22日と名古屋高金沢支判平成15年1月27日)。
5.誤り。
無効確認訴訟は、「時機に後れた取消訴訟」と呼ばれることもあり、出訴期間の制限を受けないという特色はあるが、それが要件になっているわけではない。
また、非申請型義務付け訴訟及び差止め訴訟では、「損害の重大性」が訴訟要件になっているが(行政事件訴訟法第37条の2第1項、37条の4第1項)、無効等確認訴訟では訴訟要件になっていない。
無効確認訴訟の原告適格
無効確認訴訟は、「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者(①予防的無効確認)」「その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で【当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの】(②補充的無効確認)」に限り、提起することができる(行政事件訴訟法第36条)。
なお、この要件の捉え方として、【 】は、②のみの要件なのか(二元説)、①と②の両方の要件なのか(一元説)については、対立がある。
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