行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年6問

憲法

○:3.憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。


問6 次の文章は、ある最高裁判所判決において、国籍取得の際の取り扱いの区別が憲法14条に違反するか否かにつき、審査するに当たっての基本的考え方を示した部分である。次の記述のうち、この文章から読み取れない内容を述べているものはどれか。

憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要作によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。
 日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。
(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。

☓:2.憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。

○:3.憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。

☓:4.本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

☓:5.取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

解説

1.正しい。
本肢は、不合理な差別にあたるかどうかは、「立法目的の合理性」と「立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性」の二点で判断する、としている。
そして、判例は「なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合(=立法目的の合理性)、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合(=立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性)」としている。
したがって、この二点から判断されると読み取れる。
2.正しい。
肢1では、「立法目的の合理性」と「立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性」の二点から判断することが読み取れると説明したが、この二点をもっと簡潔に言えば「区別の合理性」である。
そして、その該当部分の前後は「裁量権を考慮しても、なお・・・認められない場合には当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反する」となっている。
これを繋げると本肢と同趣旨の文章になる。
したがって、判例から読み取れる。
3.誤り。
平等権を定める憲法14条1項の「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」は、例示を示したに過ぎないが(これを「例示説」という)、これらの差別についての合憲性が争われた場合には、より厳格な違憲審査基準(=違憲になりやすい)を用いて判断すべきと考えられている。
また、精神的自由権(特に表現の自由)についても、民主政の過程の基礎をなす重要な権利であるから、より厳格な違憲審査基準(=違憲になりやすい)を用いて判断すべきと考えられている(これを「二重の基準論」という)。
したがって、肢3で述べていることは、理由づけは若干大雑把ではあるが、間違ったことはいっていない。
しかし、これらの考え方を当該判例から読み取ることはできない。
4.正しい。
本肢の内容を判例に当てはめると「日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ(=様々な側面に強い影響を与える)重要な法的地位でもある。・・・したがって、・・・区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては(=区別の合理性を判断する際には)、慎重に検討することが必要である。」となる。
したがって、判例から読み取れる。
5.正しい。
本肢の内容を判例に当てはめると「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。(=本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うもの)したがって、・・・区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては(=区別の合理性を判断する際には)、慎重に検討することが必要である」となる。
したがって、判例から読み取れる。


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