行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年9問

行政総論

○:2.地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。


問9

行政契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。見解が分かれる場合は、最高裁判所の判例による。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。

○:2.地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。

☓:3.地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。

☓:4.地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない判断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たらず、違法ではない。

☓:5.地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止しない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法である。

解説

1.誤り。
行政契約は、給付的なものに法律の根拠が必要ないのは当然に、その内容が国民に義務を課したり、その権利を制限したりするものについても、法律の根拠は原則として必要ないと一般に考えられている。
なぜなら、侵害留保理論は、一方的に義務を課し、権利を制限する場合に、法律の根拠を要求するものであり、当事者の意思の合致によって成立する行政契約には妥当しないからである。
もっとも、契約方式をとればどんなものでも法律の根拠なくして締結できるわけではなく、例えば、許認可等の利益を付与する代わりに寄付を要求する契約(これを「交換契約」という)は、明文の根拠が必要とするのが通説である。
2.正しい。
「随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になる」(最判昭和62年5月19日)
3.誤り。
東京都ごみ焼却場設置する行為について判例は、その設置されるまでの流れを下記のように個別に判断し、そのいずれにも公権力は認められないから、抗告訴訟は提起できないとしている(最判昭39.10.29)。
また、本肢では既に契約の締結がなされているから、その観点からも差止め訴訟は提起できない。
①ごみ焼却場設置計画の議決と公布内部行為としての事実行為
②土地買収私法上の行為としての事実行為
③建設会社と建築契約を締結私法上の行為としての事実行為
④建築等の設置行為事実行為
4.誤り。
地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば、それは、考慮すべき事項を十分考慮することなく、一つの考慮要素にとどまる域外業者であることのみを重視している点において、極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず、そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用に当たる(最判平成18年10月26日)。
5.誤り。
公害防止協定で定められた使用期限が経過した事案で、判例は「処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであり、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、廃棄物処理法に何ら抵触するものではない」として、差止め請求ができるとしている(最判平成21年7月10日)。
公害防止協定とは?
公害防止協定とは、地方公共団体が、公害を発生するおそれのある企業との間で(住民団体が関与するものもある)、公害防止に関する措置を協議し、事業者にその措置を約束させる協定のことである。
1964年に横浜市と(株)電源開発の間で結ばれたのを皮切りに、その後、全国へと急速に広がることとなり、現在では、法律や条例と並ぶ第三の公害規制手段になっている(現在の全国の協定総数は、数万件になっている)。


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