解答 行政書士試験 平成24年37問
商法会社法
○:2.ア・オ
○:2.ア・オ
問37 株式会社の設立に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。
ア 発起人以外の設立時募集株式の引受人が金銭以外の財産を出資の目的とする場合には、その者の氏名または名称、目的となる財産およびその価額等を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
イ 発起人が会社のために会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約をする場合には、目的となる財産、その価額および譲渡人の氏名または名称を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
ウ 会社の成立により発起人が報酬その他の特別の利益を受ける場合には、報酬の額、特別の利益の内容および当該発起人の氏名または名称を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
エ 会社の設立に要する費用を会社が負担する場合には、定款の認証手数料その他会社に損害を与えるおそれがないものを除いて、定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
オ 会社がその成立後2年以内に当該会社の成立前から存在する財産であって事業のために継続して使用するものを純資産の額の5分の1以上に当たる対価で取得する場合には、定款を変更して、目的となる財産、その価額および譲渡人の氏名または名称を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
○:2.ア・オ
☓:3.イ・ウ
☓:4.ウ・エ
☓:5.エ・オ
解説
ア.妥当でない。
定款に記載する事項は、次の3種類がある。
絶対的記載事項定款に必ず記載しなければならない事項で、これを欠く場合は、定款自体が無効となる。
相対的記載事項定款に記載しなければ効力を持たない事項のこと。このうち、裁判所の選任した検査役の調査など特別な手続きが要求されているものを変態的設立事項という。
任意的記載事項会社の規則等で規定しても効力を有するが、明確にしておくという趣旨で法に違反しない限りで定款に記載される事項
※それぞれの具体的内容については会社法テキスト2を参照。
本肢の「金銭以外の財産を出資の目的とする場合」というのは、いわゆる現物出資のことであり(会社法第28条第1号)、これは上記の相対的記載事項(変態設立事項にあたる)に該当する。
したがって、「定款に記載または記録しなければ、効力を生じない。」という結論のみを見ると、正しいことが記述されているように映る。
しかし、会社設立時において、現物出資を行うことができる者は、発起人のみである(会社法第34条1項、63条1項参照)。
したがって、本肢は、発起人以外の現物出資を前提としている点が妥当ではない。
イ.妥当である。
本肢は財産引受についてである。
財産引受に関して、会社法第28条第2号は「株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称」が相対的記載事項(変態設立事項にあたる)である旨を規定している。
なお、定款に記載がない財産引受は、その価額が適正であったとしても効力を生じない(最判昭36年9月15日)し、成立後の会社が追認しても財産引受は無効であり、それが有効となるわけではない(最判昭42年9月26日)。
現物出資とは?
動産や不動産などを金銭に代えて出資として差し出すこと、つまり出資を金銭以外の財産で行うことである。
肢1で説明の通り、これを行えるのは発起人のみである。
財産引受とは?
会社設立にあたって、発起人が設立後の会社のために、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約のことである。会社設立後、すぐに事業を開始するべく設備や不動産を準備しておくために行われるもので、開業準備行為に該当する。
財産引受の相手方については、制限がなく発起人以外の者でもよい。
ウ.妥当である。
本肢は発起人の報酬その他特別の利益についてである。
この点に関して、会社法第28条第3号は「株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称」が相対的記載事項(変態設立事項にあたる)である旨を規定している。
これらが、変態設立事項として定款に記載する必要があるのは、発起人自身に報酬を決定させると、いわゆる「お手盛り」により会社の財産的基盤を危うくするおそれがあるからである。
エ.妥当である。
本肢は設立費用についてである。
設立費用に関して、会社法第28条第4号は「株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)」が相対的記載事項(変態設立事項にあたる)である旨を規定している。
設立費用を無制限に会社が負担すれば、会社の財産的基盤を危うくするおそれがある。
そこで、変態設立事項とされたわけである。
オ.妥当でない。
本肢は、事後設立(変態現物出資ともいう)についてである。
事後設立は、現物出資及び財産引受の規制の潜脱に利用される可能性があるため、株主総会の特別決議が要求されている(会社法制定前は検査役の検査も求められていたが削除された。)。
すなわち、株式会社(会社法の発起設立又は募集設立したものに限る)の成立後2年以内におけるその成立前から存在する財産(純資産5分の1未満を除く)であってその事業のために継続して使用するものを取得する場合、その効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない(会社法第467条5号、309条2項11号)。
したがって、株主総会の特別決議が求められるだけで、定款の相対的記載事項ではない。
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