解答 行政書士試験 平成24年28問
民法総則
○:3.代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。
○:3.代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。
問28
代理人と使者の違いに関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。
☓:2.代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。
○:3.代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。
☓:4.代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が無効となる余地はない。
☓:5.代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。
解説
1.妥当でない。
代理人は本人のために法律行為を行う者であるが、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは、委任契約、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。
したがって、「必ず委任契約によらなければならない」とする記述は誤っている。
なお、使者は、本人が決定した意思表示を伝達するだけであるため「この使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく」とする記述は正しい。
2.妥当でない。
代理人は、意思表示の主体者であるため、意思能力は必要であるが、行為能力は政策的に不要としている(民法第102条)(それらの能力について本人は不要)。
一方、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するだけの者で行為主体者ではないから、意思能力も行為能力も不要である(それらの能力は、本人が必要)。
したがって、代理人について「行為能力を有することが必要」としている点が誤りである。
代理使者
行為者
(代理人又は使者)意思能力必要不要
行為能力不要不要
本人意思能力不要必要
行為能力不要必要
3.妥当である。
代理における行為者は代理人であるから、代理行為の成立要件・有効要件の存否は代理人について決する。
したがって、代理行為の瑕疵は、代理人について決する(民法第101条1項)。
これに対し、使者における行為者は本人であり、使者は、本人の完了した意思表示を相手方に伝達するにすぎない。
したがって、使者における当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。
4.妥当でない。
確かに、代理人は与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるが、権限を逸脱して法律行為を行った場合も有効となる余地はある。
例えば、本人が追認した場合(民法第116条)であり、また、越権行為の場合に表見代理が成立する場合(民法第110条)である。
したがって、「有効となる余地はない」とする記述は妥当ではない。
また、使者の場合は、本人の意思と異なる意思を伝達した場合、つまり表示が不一致の場合は錯誤(民法第95条)の問題となると解されている(大判大正9年5月4日)。
ただ、全ての場合に錯誤を認めてしまうと、相手方保護に欠けるきらいがあるため、本人側の事情と相手方保護の必要性のバランスを考え、表見代理(民法第110条)の問題とすべきだとする学説が存在する。
したがって、「無効となる余地はない」との記述は妥当ではない。
5.妥当でない。
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない(民法第104条)。
また、法定代理人の場合は、自己の責任で復代理人を選任することができる(民法第106条)。
したがって、代理人が本人に無断で復代理人を選任することも認められている。
なお、「使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる」とする記述は妥当である。
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