行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年8問

行政総論

○:1.土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。


問8

行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。

☓:2.広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することができないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象となっている。

☓:3.計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

☓:4.都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。

☓:5.多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定されている。

解説

1.妥当である。
侵害留保説とは、国民の権利や自由を制約するためには法律の根拠が必要とする考えであるが、土地利用を制限する用途地域などの都市計画が決定し、公告されるとその対象となる地域等の国民の権利行使を制限することになるため、同説に沿えば法律の根拠が必要である。
侵害留保説行政活動において国民の権利や自由を制約し、又は新たに義務を課する行為には法律の根拠を要するとし、一方、授益的な行為は法律の根拠は必要ないとする説で、判例・実務の立場である。
権力留保説法律による行政の原理により、行政権を統制する権限は議会に留保されており、行政権の行使は議会が制定した法律に基づかなければならないとする説。
本質留保説授益的な行為か侵害的な行為かにかかわらず、基本的人権における本質的な行政活動については、その基本的内容について、法律の授権を必要とする説で、近年、ドイツにおいて通説ないし有力視されている考えである。
全部留保説すべての行政活動において法律の授権を必要とする説で、民主主義にもっとも即した考えではあるが、行政が硬直化して臨機応変に需要の変化に対応できないなどの問題があり、現実的ではないとの批判がある。
2.妥当でない。
行政手続法における意見公募手続の規定が適用されるのは、法律に基づく命令、規則、審査基準、処分基準及び行政指導指針であり、行政計画には適用されない(行政手続法第39条1項、2条8号)。
3.妥当でない。
行政計画においては、計画策定権者に、広範な裁量が認められることは、その特徴の一つであるため、裁判所による計画裁量の統制には、一定の制限がかかるとはされているが、重大な事実誤認の有無の審査に限られるわけではなく、事実に対する評価の合理性の有無等についても審査がなされている。
「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。」(最判平成18年11月2日)
「樹木の保全のためには南門の位置は現状のとおりとするのが望ましいという建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができる場合には、更に、本件民有地及び本件国有地の利用等の現状及び将来の見通しなどを勘案して、本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるかどうかを判断しなければならないのであり、本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるときには、その建設大臣の判断は、他に特段の事情のない限り、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとなるのであって、本件都市計画決定は、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるのである。」(最判平成18年9月4日)
4.妥当でない。
都市計画法おける権利行使の制限については、都市計画法上、損失補償についての規定はおかれておらず、また、憲法で保障されている損失補償が認められるかどうかの判断は、判例及び通説の立場である特別犠牲説によれば、損失補償を行わないと社会全体の公平性が保てないような特別の犠牲がある場合は補償を要し、一般的な制限に止まる場合は、補償は必要ないとされている。
この点、都市計画に係る道路によって、所有する土地について建築物の建築の制限を課せられる損失について、判例は「一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできない」(最判平成17年11月1日)としている。
したがって、一般的に損失補償が認められているとはいえない。
5.妥当でない。
行政事件訴訟法では行政計画を争うための特別な訴訟類型は法定されていないため、抗告訴訟を提起することになる。
なお、行政計画のうち国民を拘束する「拘束的計画」が抗告訴訟の対象になるかについては、計画の国民への直接的な影響力を考慮して処分性を認め取消訴訟の対象となることもあるという判例がある反面(最判昭和60年12月17日、最判昭和61年2月13日、最判平成4年11月26日)、土地区画整理事業計画の決定は、その公告がなされた段階では、青写真にすぎない一般的・抽象的な単なる計画にとどまるため、抗告訴訟の対象にならないものとされており(青写真判決:最大判昭和41年2月23日)、これまで拘束的計画については、判例の判断は分かれていた。しかし、近時の判決で最高裁は、青写真判決を変更し市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定についても、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしている(最大判平成20年9月10日)。


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