解答 行政書士試験 平成21年58問
一般知識 文章理解
○:2.(ア)否定を表現できない (イ)ことばによる答えなどない (ウ)共通性 (エ)隔離性
○:2.(ア)否定を表現できない (イ)ことばによる答えなどない (ウ)共通性 (エ)隔離性
問58 次の記述において、文中の空欄[ア]~[エ]に当てはまる語句等の組合せとして、正しいものはどれか。
私は四十数年間、診療に多く描画を併用してきた。ごく当たり前のことだが、絵画は言語と違って、病的か病的でないかの区別がない。これは治療の場における想像力を開放する。言語による治療と比べれば、単一の正解などないのである。
ただ、絵画は、[ ア ]。森の代わりに荒れ地は描けるが「森でないこと」自体は表現できないのである。逆に絵画は[常識的に因果関係のありそうなこと]は表現できても、「因果関係」そのものは表現できない。
しようとすればどうしても×や矢印などの記号を必要とする。
これに対して、言語は記号が主成分である。そして社会通念に支えられ非常にたくさんの申し合わせ(主として言語)とコンテクスト(主として非言語)とを必要とする。アスペルガー症候群(汎発性発達障害、高知能自閉症といわれていたもの)の児童は「横を向いてはいけない」という叱責に当惑する。「前を向けばいいのか、後ろを向けばいいのか、それとも-」とあらゆる可能性を考えてしまうかれらは「何々するな」という否定にただただ困惑する。私どもが「なぜ何遍も同じ間違いをするんだ」という上司や教師の叱責に困惑する時、その擬似体験ができるだろう。
[ イ ]からである。
そもそも言語とは、通じ合えない複数箇の存在である。言語は初めからバベルの塔以後だったのだ。もっとも、ユーラシア大陸の大部分の言語は深部構造に[ ウ ]があるという人もいる。しかし、ニューギニアではすぐ隣の部族がすでに深部構造の[ ウ ]さえない、非常に異質の言語を語しているそうである。こうなると、言語は部族限りの秘密を守る手段となっている。
言語が複雑になってゆくのも、[ エ ]を人々が必要とするからではなかろうか。
(出典 中井久夫「絵画と比べての言語の特性について」より)
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.(ア)因果関係を表現できない (イ)ことばによる答えなどない (ウ)象徴性 (エ)隔離性
○:2.(ア)否定を表現できない (イ)ことばによる答えなどない (ウ)共通性 (エ)隔離性
☓:3.(ア)論理的ではない (イ)直接経験できない (ウ)共通性 (エ)可能性
☓:4.(ア)否定を表現できない (イ)直接経験できない (ウ)隔離性 (エ)象徴性
☓:5.(ア)論理的ではない (イ)ことばによる答えなどない (ウ)象徴性 (エ)可能性
解説
[ ア ]について
穴あき問題を解くにあたっては、その空欄の前後の接続詞、特に逆接や並列の接続詞がキーになることが少なくない。
本空欄においても空欄の後には、「逆に」という逆接があり、これがキーとなる。
「逆に」としているのだから、「逆に」と空欄の間の文章は、空欄と並列的な内容が入ることになり、本文の「「森でないこと」自体は表現できない」と同じような意味を持つ言葉が正解となる。
したがって、[ ア ]には「否定を表現できない」が入る。
[ ウ ]について
[ ウ ]は2つあるが、分かりやすいのは後半の「すぐ隣の部族がすでに深部構造の[ ウ ]さえない」である。「さえない」と言っているのだから、[ ウ ]には、すぐ隣の部族であれば普通は有るものが入ることになる。
したがって、[ ウ ]には、「共通性」が入る。
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