行政書士過去問ドリル

行政書士試験 平成21年59問

一般知識 文章理解


問59 次の1~5の記述のうち、本文の内容と一致しているものはどれか。

演劇などのパフォーミング・アートにはすべて、何かを演じようとする自分と見る観客を喜ばせようとする自分の分裂が存在する。それは「演じている自分」とそれを「見る自分」の分裂であり、世阿弥が「離見の見」として概念化したものである。落語、特に古典落語においては、習い覚えた根多(ネタ)*1の様式を踏まえて演りながら、たとえばこれから自分が発するくすぐりをいま目の前にいる観客の視点からみる作業を不断に繰り返す必要がある。昨日大いに観客を笑わせたくすぐりが今日受けるとは限らない。彼はいったん今日の観客になって、演じる自分を見る必要がある完全に異質な自分と自分との対話が必要なのである。
 しかも落語という話芸には、他のパフォーミング・アートにはない、さらに異なった次元の分裂の契機がはらまれている。それは落語が直接話法の話芸であることによる。落語というものは講談のように話者の視点から語る語り物ではない。言ってみれば地の文がなく、基本的に会話だけで構成されている。端的に言って、落語はひとり芝居である。演者は根多のなかの人物に瞬間瞬間に同一化する。根多に登場する人物たちは、おたがいにぼけたり、つっこんだり、だましたり、ひっかけたりし合っている。そうしたことが成立するには、おたがいがおたがいの意図を知らない複数の他者としてその人物たちがそこに現れなければならない。落語が生き生きと観客に体験されるためには、この他者性を演者が徹底的に維持することが必要である。落語家の自己はたがいに他者性を帯びた何人もの他者たちによって占められ、分裂する。私の見るところ、優れた落語家のパフォーマンスには、この他者性の維持による生きた対話の運動の心地よさが不可欠である。それはある種のリアリティを私たちに供給し、そのリアリティの手ごたえの背景でくすぐりやギャグがきまるのである。
おそらく落語という話芸のユニークさは、こうした分裂のあり方にある。
 もっと言えば、そうした分裂を楽しんで演じている落語家を見る楽しみが、落語というものを観る喜びの中核にあるのだと思う。そして、人間が本質的に分裂していることこそ、精神分析の基本的想定である。意識と無意識でもいい、自我と超自我とエス*2でもいい、精神病部分と非精神病部分でもいい、本当の自己と偽りの自己でもいい、自己のなかに自律的に作動する複数の自己があって、それらの対話と交流のなかにひとまとまりの「私」というある種の錯覚が生成される。それが精神分析の基本的な人間理解のひとつである。
落語を観る観客はそうした自分自身の本来的な分裂を、生き生きとした形で外から眺めて楽しむことができるのである。分裂しながらも、ひとりの落語家として生きている人間を見ることに、何か希望のようなものを体験するのである。
(出典 藤山直樹「孤独と分裂 落語家の仕事、分析家の仕事」より)
(注)*1 根多(ネタ):落語の咄(はなし)のこと。この表記は当て字である。
   *2 エス:精神分析学の用語。人間の意識の深層にある無意識の部分で、感情、欲求、衝動などとして表面にあらわれる。

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4.落語家は演じている最中に、刻々と観客の反応を手ごたえとして感じているわけで、例えばその反応が昨日とは違い悪ければ、習い覚えた根多の様式に対する疑問を常にその場で考えなくてはならず、その意味での統一が必要とされる。

3.落語家の分裂と統一を考えてみると、落語家がそれぞれの瞬間に登場人物に同化することで常に分裂をしているのであるから、話の始まる前の昨日までの経験を思い起こすところで統一が図られていることとなる。

2.一般にパフォーミング・アートでは、演者はその言説、行動を演じている「自分そのもの」を観客に直接見せている。そこでは語ったり見せたりする語の内容仕草自体が演者の技量の直接表現である。

5.落語家も人間の本質として分裂しているが、登場人物は分裂した各人格を表しており、落語はその分裂と統一を具体化している。観客も分裂している人間としてその本質の反映を観ることができることで落語(落語家)を好むのである。

1.「演じている自分」と「見る自分」の分裂とは、ストーリーを語ることで全体を統一している話者(落語家)ということで、その話の中の登場人物になりきることで会話を「生き生き」とさせ、また話全体で観客に実際の場にいて見聞きしているような臨場感を与えることである。

平成21年第59問解説 平成21年第60問 平成21年第58問

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