行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年14問

行政法 行政不服審査法

○:5.裁決においては、処分を変更することが許される場合でも、これを審査請求人の不利益に変更することはできない。


問14

処分についての審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.裁決には理由を附すこととされているが、これが附されていなくとも、裁決が違法となることはない。

☓:2.裁決においては、違法を理由として処分を取消すことはできるが、不当を理由として取消すことはできない。

☓:3.裁決は、書面ですることが原則であるが、緊急を要する場合は、口頭ですることも許される。

☓:4.裁決に対して不服がある場合でも、これに対して行政事件訴訟法による取消訴訟を提起することはできない。

○:5.裁決においては、処分を変更することが許される場合でも、これを審査請求人の不利益に変更することはできない。

解説

1.妥当でない。
行政不服審査法41条1項は「裁決は、書面で行ない、かつ、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をしなければならない。」としており、また、行政不服審査法の前身である訴願法の時代から、理由のない裁決は違法とされている。
「訴願の裁決については訴願法一四条においてその理由を付すべきことを要請しているから、裁決にその理由を説示しないことは違法といわれなければならない。」(最判昭和32年1月31日)
「法人税法三五条五項(昭和三七年法律六七号による削除前)が、審査決定の書面に理由を附記すべきものとしているのは、訴願法や行政不服審査法による裁決の理由附記と同様に、決定機関の判断を慎重ならしめるとともに、審査決定が審査機関の恣意に流れることのないように、その公正を保障するためと解されるから、その理由としては、請求人の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明かにしなければならない。・・・中略・・・理由にならないような理由を附記するに止まる決定は、審査決定手続に違法がある場合と同様に、判決による取消を免れないと解すべきである。」(最判昭和37年12月26日)
2.妥当でない。
行政不服審査法第1条1項では「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」としており、また、事情裁決について規定している行政不服審査法第40条6項では「処分が違法又は不当ではあるが・・・中略・・・審査庁は、裁決で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。」とし、不当を理由に取消せることを前提としている。なお、不服申立ては同じ行政の枠内で審査するため、「不当」も対象としているが、司法が判断することになる行政事件訴訟では、「不当」はその対象にならないことに注意。
3.妥当でない。
裁決の慎重さを確保し、審査決定が審査機関の恣意に流れることのないようその公正を保障するため、裁決は書面で行なわれなければならず(行政不服審査法41条1項)、緊急時に口頭でできる等の例外も認められていない。
4.妥当でない。
取消訴訟とは、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えのことであり(行政事件訴訟法第9条1項)、裁決に対して不服がある場合は裁決の取消しの訴えをすることができる(行政事件訴訟法3条3項)。
5.妥当である。
いわゆる「不利益変更の禁止」であるが(行政不服審査法40条5項但書)、不服申立てとは、言ってみればお上に逆らうことであり、不利益変更を許せば、逆らった制裁目的で行使される恐れもあり、国民は萎縮してまともな権利利益の救済を図ることができなくなるため、このような規定が設けられている。


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