解答 行政書士試験 平成22年32問
民法債権
○:1.ア・イ
○:1.ア・イ
問32 AはBのためにある事務処理を行った。これが、【1】A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、【2】Bのために行った事務管理である場合とに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア、Aは、【1】の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、【2】の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。
イ、Aは、【1】の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、【2】の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。
ウ、Aは、【1】の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、【2】の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。
エ、Aは、【1】の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、【2】の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。
オ、Aは、【1】の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、【2】の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
○:1.ア・イ
☓:2.ア・オ
☓:3.イ・エ
☓:4.ウ・エ
☓:5.ウ・オ
解説
ア.正しい。
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない(民法第649条)。 他方、事務管理では、前払いに関する規定をおいておらず、委任の前払いの規定の準用もしてない(民法第701条参照)。
したがって、【1】も【2】も正しい。
イ.正しい。
委任事務において、受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負い(民法第644条)、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる(民法第650条1項)。
他方、事務管理では、管理者は本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる(民法第702条1項)。
したがって、【1】も【2】も正しい。
ウ.誤り。
古くから代理の内部関係は委任契約であると考えられ、民法もそれを想定しているが、委任関係にありながらも代理権が認められないこともあり(問屋、仲買人など)、逆に、委任契約以外の場合にも代理権が授与されることがあることから(請負・雇用・組合など)、現在では、委任契約と代理権授与契約とは区別して捉えられており、委任契約がされているからといって、代理する権限が法律上当然に認められるわけではない。
また、事務管理でも、判例は「事務管理者が本人の名で第三者との間に法律行為をしても、その行為の効果は、当然には本人に及ぶ筋合のものではなく、そのような効果の発生するためには、代理その他別個の法律関係が伴うことを必要とする」(最判昭和36年11月30日)としており、代理する権限は、法律上当然に認められてない。
したがって、【1】は正しいが、【2】が誤りである。
エ.誤り。
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない(民法第646条1項)。また、事務管理でも、当該規定を準用している(民法第701条)。
したがって、【1】は正しいが、【2】が誤りである。
オ.誤り。
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない(民法第645条)。また、事務管理でも、当該規定を準用している(民法第701条)。
したがって、【1】は正しいが、【2】が誤りである。
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