行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成23年1問

基礎法学

○:3.法律が発効するためには、公布がされていることと施行期日が到来していることとの双方が要件となる。


問1

わが国の法律に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.わが国の法律は基本的には属人主義をとっており、法律によって日本国民以外の者に権利を付与することはできない。

☓:2.限時法とは、特定の事態に対応するために制定され、その事態が収束した場合には失効するものをいう。

○:3.法律が発効するためには、公布がされていることと施行期日が到来していることとの双方が要件となる。

☓:4.国法は全国一律の規制を行うものであり、地域の特性に鑑み特別の地域に限って規制を行ったり、規制の特例措置をとったりすることは許されない。

☓:5.日本国憲法は遡及処罰の禁止を定めており、法律の廃止に当たって廃止前の違法行為に対し罰則の適用を継続する旨の規定をおくことは許されない。

解説

1.妥当でない。
わが国の法の適用に関しては、自国領域内に限定するという属地主義が原則的に採用されており(刑法第1条1項など)、自国民に対しては場所を問わず自国の法を適用するという属人主義は例外的に採用されているにすぎない。
例えば、刑法では、国民による国外の一定の犯罪に対して処罰できる旨が規定されている(刑法第3条)。
また、属人主義であるか、属地主義であるかにかかわらず、日本国民以外の者に対し、法律によって権利を付与することは可能であり、例えば、外国人の地方参政権は、憲法上保障されてないが、この点について判例は「法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」(最判平成7年2月28日)としており、実際にそれを実現させようとする動向もある。
2.妥当でない。
限時法(時限法、時限立法とも呼ばれる)とは、有効期間を定めて立法された法令をいう。
特定の事態に対応するために制定されることが多いが、その事態の進捗状況によって効力が左右されるわけではなく、あくまでも効力は、原則として期間内であるかどうかにかかっている。
参考になる例としては、平成19年の民主党と自民党のねじれ国会により、限時法たるテロ対策特別措置法の有効期間を延長する立法措置が間に合わずそのまま失効し、海上自衛隊がインド洋から撤退することとなり、注目を浴びることになったが、仮に限時法の効力がその事態の進捗状況にかかるのであれば、このような問題には発展しなかったといえよう。
なお、限時法に対して、有効期間を定めないで立法された法令は、恒久法と呼ばれる。
3.妥当である。
法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行するとされている(通則法第2条本文)。
また、判例は、「成文の法令が一般的に国民に対し現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることが前提要件とせられるのであって、このことは、近代民主国家における法治主義の要請からいって、まさにかくあるべきことといわなければならない。わが国においては、明治初年以来、法令の内容を一般国民の知りうべき状態に置く方法として法令公布の制度を採用し、これを法令施行の前提要件として来たことは、明治初年以来の法制を通じ窺えるところであり、現行制度の下においても同様の立前を採用している」(最大判昭和32年12月28日)とし、 法律の発効には公布が必要としている。
4.妥当でない。
法律は全国一律の規制を行うのが原則であるが、地域の特性に鑑みて特別の地域に限って規制したり(憲法第95条に基づく地方自治特別法など)、規制の特例措置をとったり(構造改革特別区域法など)することは許される。
5.妥当でない。
刑事訴訟法第337条では、犯罪後の法令により刑が廃止されたときは判決で免訴の言渡をしなければならないとしている。
しかし、その例外として「限時法の理論」というものがあり、これは、法令の有効期間が、明定されている限時法においては、失効する間際の行為は、現実的にその有効期間中に処罰することは困難であり、事実上、その法の罰則規定の有効期間が短縮されてしまうため、それを防止するべく特別の規定がなくとも失効後にも処罰できるという考えで、判例において認められている。
もっとも、この理論が認められるにしても、その認めうる限界等について問題が生じることから、近時の限時法の立法例では、それを避ける意味合いで原則として「この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」という趣旨の規定を、その制定の際に、あらかじめ挿入する措置がとられている。
また、このような規定が有効であることは判例も認めている(最判昭和30年7月22日、最判昭和37年4月4日など)。
したがって、「罰則の適用を継続する旨の規定をおくことは許されない。」というのは誤りである。


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