解答 行政書士試験 平成23年50問
一般知識
○:2.ア・エ
○:2.ア・エ
問50 貿易自由化に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア、EU(欧州連合)域内では、シェンゲン条約により域内での国境通過にかかる手続などが大幅に簡素化され、また、共通通貨ユーロがすべての加盟国に導入されており、加盟国がEU域内で自国産業の保護を行う手段は、関税と補助金に限定されている。
イ、GATT(関税と貿易に関する一般協定)は、自由、無差別、互恵・多角を原則とし、多国間での貿易交渉を基準としつつ、輸入数量制限の撤廃や、関税引き下げなどの貿易自由化を推進してきた。
ウ、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)では、サービス、人の移動、基準認証などについて、加盟国間での整合性を図るとともに、例外品目を認めない形で、貿易における関税撤廃が目標とされている。
エ、UNCTAD(国際連合貿易開発会議)は、途上国の経済開発促進と自由貿易推進のために国際連合が設けた会議で、国際連合の補助機関として、4年に一度開催されている。
オ、WTO(世界貿易機関)は、サービス貿易や知的財産権に関する国際ルールを定めており、ドーハ・ラウンドでは、農業分野での自由化について、関税の上限設定とミニマム・アクセス(最低輸入義務)の設定が打ち出された。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
○:2.ア・エ
☓:3.イ・オ
☓:4.ウ・エ
☓:5.ウ・オ
解説
ア.誤り。
EU(欧州連合)域内では、シェンゲン協定により域内での国境通過にかかる手続などが大幅に簡素化された。
しかし、EU加盟27か国のうち、ユーロを導入しているのは18か国であり、イギリスやデンマークなど導入してない国もある(2014年1月現在)。
また、EUは加盟国間で関税同盟を結んでいるため、加盟国間の貿易(域内貿易)では関税その他の貿易関係措置は課されない。
したがって、本肢は「ユーロがすべての加盟国に導入されており」としている点、EU域内で自国産業の保護を行う手段に「関税」を挙げている点で誤りである。
イ.正しい。
GATT(関税および貿易に関する一般協定)とは、自由貿易の推進、世界貿易の拡大を目指す国際協定である。
戦後の国際経済体制を支える重要な柱の一つとして1948年1月に発足し、全8回の大規模関税交渉が行われる中で、加盟国間で、輸入数量制限の撤廃や関税率は大幅に引き下げられる等の成果を残し、95年1月に発足したWTO(世界貿易機関)に引き継がれることになった。
なお、その原則としては以下が挙げられる。
原則意味
【1】
自由
貿易障壁削減と関税化による自由な貿易体制
【2】
無差別
最恵国待遇、内国民待遇
【3】
多角
特定国間ではなくすべての加盟国が加わる多角的交渉
【4】
互恵
互いに特別の便宜や利益を与え合う
※【1】~【3】の3原則にすることもある。
ウ.正しい。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)では、2015年までに加盟国間の貿易(サービス、人の移動、基準認証など)について、10年以内に加盟国間での整合性を図るとともに、例外品目を認めない形で、貿易における関税撤廃することにより、貿易自由化の実現を目指すFTA(自由貿易協定)を包括するEPA(経済連携協定)を目標としている。
エ.誤り。
国際連合貿易開発会議は、発展途上国の経済開発促進と南北問題の経済格差是正のために国際連合が設けた会議で、国際連合の補助機関として、4年に一度開催されている。
国際連合貿易開発会議は、開発途上国の経済的困難が国際的な協力によって解決されない限り、世界の平和や繁栄もあり得ないとの考えの下に設置されたもので、それを表す具体的な制度としては、特恵関税制度があり、これは先進諸国が開発途上国からの輸入に対して一方的に低い関税率を適用し、開発途上国の輸出収入の増大や工業化の促進、経済発展を目的とした制度である。
したがって、本肢では「自由貿易推進のため」としている点で誤りである。
オ.正しい。
WTO(世界貿易機関)は、物品貿易だけでなくサービス貿易や知的財産権、金融、情報通信なども含めた包括的な国際通商ルールを定めている。
また、ドーハ・ラウンド(ドーハ開発アジェンダ)では、農業分野での自由化について、関税の上限設定とミニマム・アクセス(最低輸入機会)などの設定が打ち出された。
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