行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成23年18問

行政事件訴訟法

○:5.実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いて、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。


問18

実質的当事者訴訟に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.実質的当事者訴訟は、行政主体と一般市民との間における対等当事者としての法律関係に関する訴訟のうち、公法上の法律関係に関する訴訟であり、私法上の法律関係に関する訴訟は民事訴訟となる。

☓:2.個別法の中に損失補償に関する規定がない場合であっても、憲法に直接基づいて損失補償を請求することが可能だと解されているが、この損失補償請求の訴訟は実質的当事者訴訟に該当する。

☓:3.国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えを提起する場合、この確認の訴えは実質的当事者訴訟に該当する。

☓:4.実質的当事者訴訟における原告勝訴の判決は、その事件について、被告だけでなく、関係行政機関をも拘束する。

○:5.実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いて、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。

解説

1.正しい。
実質的当事者訴訟とは、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう(行政事件訴訟法第4条後段)。
これに対し、私法上の法律関係に関する訴訟は民事訴訟であり、すなわち公法上の当事者訴訟と民事訴訟の区別は、訴訟における審判の対象(訴訟物)が、公法関係であるか、私法関係であるかによる。
2.正しい。
個別法に損失補償に関する規定がない場合であっても、直接憲法第29条第3項を根拠として損失補償を請求することは可能と解されている(河川附近地制限令事件:最大判昭和43年11月27日)。
また、国家賠償請求が民事訴訟であるのに対し、損失補償の請求は、実質的当事者訴訟に該当する。
なお、判例は、国家賠償請求(民事訴訟)に損失補償請求(実質的当事者訴訟)を追加的に併合することを認めている(最判平成5年7月20日)。
3.正しい。
日本国籍を有することの確認の訴えは、公法上の法律関係について確認する訴えであるから、当事者訴訟のうち実質的当事者訴訟にあたる(行政事件訴訟法第4条後段)。
なお、日本国籍の確認を求めた「最判平成9年10月17日」は、判決の内容からは必ずしも実質的当事者訴訟であるかは判断できないが、事件番号が「平成8(行ツ)60」となっており、これは平成8年の最高裁における行政訴訟上告事件60番目という意味であるため、実質的当事者訴訟として扱われていると分かる。
4.正しい。
行政事件訴訟法第41条1項では、取消訴訟の拘束力に関する規定である同法第33条1項を準用しているため、実質的当事者訴訟にも拘束力が認められる。
したがって、原告勝訴の判決は、関係行政機関を拘束する。
5.誤り。
行政事件訴訟法第44条は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」としているが、実質的当事者訴訟では「行政庁の処分その他公権力の行使」に関わらない場合があるので、その場合には民事保全法の仮処分をすることができる。
なお、「行政庁の処分その他公権力の行使」に関わる実質的当事者訴訟である場合については、当事者訴訟では、執行停止の制度が準用されておらず、民事保全法の仮処分ができないとした場合、仮の権利救済制度が欠缺する事態に陥ることから、することができるという見解、部分的に許容する見解、条文通りにできないとする見解など各説が混在している。


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