解答 行政書士試験 平成23年27問
民法総則
○:4.四つ
○:4.四つ
問27 無効または取消しに関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはいくつあるか。
ア、BがAに騙されてAから金銭を借り入れ、CがBの保証人となった場合、CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができる。
イ、BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。
ウ、BがAから絵画を購入するに際して、Bに要素の錯誤が認められる場合、無効は誰からでも主張することができるから、Bから当該絵画を譲り受けたCも当然に、AB間の売買契約につき錯誤無効を主張することができる。
エ、BがAに強迫されて絵画を購入した場合、Bが追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、追認があったものと推定される。
オ、未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.一つ
☓:2.二つ
☓:3.三つ
○:4.四つ
☓:5.五つ
解説
ア.妥当でない。
本肢の金銭消費貸借契約は、B(本人)・A(相手方)間でなされたものであり、Cはたとえ保証人であっても契約の当事者ではないからこれを取り消すことはできないとするのが判例の立場である(大判昭和20年5月21日)。
なお、保証人は主たる債務者の抗弁を援用することができるが、取消権は、本人を保護するためのものであり、本人の自由意思に任せるべきであるから、契約の取消権を援用することはできないとされる(ただし、有力な反対説もある)。
イ.妥当でない。
詐欺による取消しができなくなる理由として、「追認」「法定追認」が考えられる。
民法第125条5号では「取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡」が法定追認になると規定しており、法定追認となるためには、追認をすることができる時以降に法定追認となる行為をしたことが要求される。
本肢において、BがCに転売したのは、詐欺に気が付く前であり未だ追認できる時とはなっていないため、法定追認には該当しない。
したがって、Bは追認できるときから5年間、行為の時から20年間は取り消すことができる(民法第126条)。
ウ.妥当でない。
錯誤無効の主張は錯誤者を保護するための制度であるから、原則として第三者は錯誤無効を主張することはできない(最判昭和40年9月10日)。
したがって、Cは当然に、AB間の売買契約につき錯誤無効を主張することはできない。
なお、第三者でも錯誤無効を主張ができる例外として、以下の判例がある。
「第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者自らは意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者は、意思表示の無効を主張して、その結果生ずる表意者の債権を代位行使することができる。」(最判昭和45年3月26日)。
エ.妥当でない。
強迫に基づく意思表示は取り消すことができる(民法96条1項)が、追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、取消権は時効によって消滅する(民法第126条)。
しかし、本肢がいうように「追認があったものと推定される」わけではない。
オ.妥当である。
未成年者が親権者の同意を得ないでした金銭の借入は取り消すことができる(民法第5条2項)。
そして、未成年者が取り消した場合は、法律行為は遡及的に無効となる。ただし、制限行為能力者(未成年者も含まれる)は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う(民法第121条)。
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