行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成23年19問

行政法 国家賠償法

○:1.国家賠償法2条にいう「公の営造物」は、民法717条の「土地の工作物」を国家賠償の文脈において表現したものであるから、両者は同じ意味であり、動産はここに含まれないと解されている。


問19

国家賠償法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.国家賠償法2条にいう「公の営造物」は、民法717条の「土地の工作物」を国家賠償の文脈において表現したものであるから、両者は同じ意味であり、動産はここに含まれないと解されている。

☓:2.国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるが、無過失責任と結果責任とは異なるので、不可抗力ないし損害の回避可能性のない場合については、損害賠償責任を負うものとは解されない。

☓:3.外国人が被害者である場合、国家賠償法が、同法につき相互の保証があるときに限り適用されるとしているのは、公権力の行使に関する1条の責任についてのみであるから、2条の責任については、相互の保証がなくとも、被害者である外国人に対して国家賠償責任が生じる。

☓:4.国家賠償法2条が定める公の営造物の設置又は管理の瑕疵について、設置又は管理に当る者(設置管理者)とその費用を負担する者(費用負担者)とが異なるときは、費用負担者は、設置管理者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときに限り、被害者に対する損害賠償責任を負う。

☓:5.国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるから、公の営造物の設置又は管理の瑕疵の判断にあたっての考慮要素は、事件当時における当該公の営造物の客観的状態に限られる。

解説

1.誤り。
国家賠償法第2条は、民法第717条を念頭に置いて作られたものであり、その意味で「公の営造物」は、民法第717条の「土地の工作物」を国家賠償の文脈において表現したものといえる。
しかし、行政活動のもつ特殊性等の理由により、両規定ではいくつもの相違点があり、その一つとして、民法第717条の「土地の工作物」では原則として土地のみを対象としているのに対し、国家賠償法第2条の「公の営造物」には、公用又は公共の用に供している有体物を指し、動産も含まれるという違いがある。
動産が含まれるとした実際の裁判例としては、警察官の拳銃(大阪高判昭和62年11月27日)、警察署の公用車(札幌高裁函館支判昭和29年9月6日)、自衛隊の砲弾(東京地判昭和56年3月26日)などがある。
例えば、警察官の拳銃の暴発で市民が死傷した場合、それを管理する公務員(警察官)の同法1条に基づく責任が問題となるほか、同法2条の適用を受けることとなる。
2.正しい。
不可抗力とは、単に無過失というだけでなく人の力ではどうにもできない事態を意味し、分かりやすく落ち度の度合いを比較して表すと次のようになる。
「重過失」 > 「過失」 ≧ 「軽過失」 > 「無過失」 > 「不可抗力」
そして、国家賠償法2条の責任は、無過失責任主義とされているものではあるが、無制限にその責任を認めるものではなく、それが不可抗力ないし回避可能性のない場合であるときは、責任は負わないとされている(高知落石事件:最判昭和45年8月20日)。
例えば、同じ道路上の管理の瑕疵による賠償責任でも、長期間故障車両を道路に放置していた場合には、道路の管理に瑕疵があったとしているが(最判昭和50年7月25日)、夜間に工事中であることを表示する赤色灯等が通行車によって倒されて消えた場合に、間もなくしてそれが起因となり、他車両が事故を起こしても、道路管理者がこれを原状に復し道路の安全を保持することが不可能であるから賠償責任は負わないとしている(最判昭和50年6月26日)。
3.誤り。
国家賠償法第6条は「この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。」としており、「この法律は」となっているため、2条の責任においても相互保証主義は適用される。
4.誤り。
国家賠償法第1条及び2条の規定によって国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる(国家賠償法第3条)。
したがって、設置管理者の過失等にかかわらず、費用負担者は被害者に対して損害賠償責任を負う。
5.誤り。
国家賠償法第2条は、無過失責任を定めたものであるが、肢2で説明のとおり無制限にその責任を認めるものではなく、それが不可抗力ないし回避可能性のない場合であるときは、責任は負わないとされているため、考慮要素は事件当時における当該公の営造物の客観的状態に限られない。
例えば、考慮される主な要素としては、以下のようなものがある。
【1】財政的な考慮
単に予算が足りなかったり、費用が多額だったりというだけでは、免責にはならないが(高知落石事件:最判昭和45年8月20日)、それが社会的にみて不相当・不合理という場合には免責事由になりうる。
【2】時間的考慮
前掲最判昭和50年6月26日の事案(肢2参照)において、事故当時の道路の客観的状態には瑕疵が認められるのに、安全を保持することが不可能であることを理由に免責したのは、時間的考慮をしたことによる帰結である。
【3】技術的考慮
視力障害者の転落事故防止用の点字ブロックを設置しなかったことが設置又は管理の瑕疵に当たるかの判断について判例は、「その安全設備が、視力障害者の転落等の事故防止に有効なものとして、その素材、形状及び敷設方法等において相当程度標準化されて全国ないし当該地域における道路、駅のホーム等に普及しているかどうか、当該駅のホームにおける構造又は視力障害者の利用度から予測される視力障害者の事故発生の危険性の程度、事故を未然に防止するため右安全設備を設置する必要性の程度及び右安全設備の設置の困難性の有無等の諸般の事情を総合考慮することを要する。」(最判昭和61年3月25日)としている。


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