行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成18年20問

行政法 国家賠償法

○:4.消防職員の消火ミスにより、一度鎮火したはずの火災が再燃し、家屋が全焼した場合、失火責任法が適用されるため、被害者は国又は公共団体に対して国家賠償法1条に基づく損害賠償を求めることができない。


問20

国家賠償法1条による賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の立場に照らして、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.公立学校のプールにおける飛込みで事故が起きた場合、国家賠償法1条にいう「公権力の行使」とは、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」を意味するから、国家賠償法1条は適用されず、民法上の不法行為として損害賠償を求めることになる。

☓:2.警察官でない者が、公務執行中の警察官であるかのような外観を装い、他人を殺傷した場合、当該被害者ないしその遺族は、いわゆる外形理論により国又は公共団体に対して国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めることができる。

☓:3.国会議員が国会で行った発言によって他人の名誉や信用を害した場合、憲法51条により国会議員の法的責任は免責されるため、被害者は国家賠償法1条に基づく損害賠償を求めることができない。

○:4.消防職員の消火ミスにより、一度鎮火したはずの火災が再燃し、家屋が全焼した場合、失火責任法が適用されるため、被害者は国又は公共団体に対して国家賠償法1条に基づく損害賠償を求めることができない。

☓:5.パトカーが逃走車両を追跡中、逃走車両が第三者の車両に追突し、当該第三者が死傷した場合、被害者たる第三者の救済は、国家賠償法1条による損害賠償ではなく、もっぱら憲法29条に基づく損失補償による。

解説

1.誤り。
公立中学校の水泳の授業におけるプールでの飛込み練習中に事故が起きた事案について、最高裁は、「国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解する」としている(最判昭和62年2月6日)。
2.誤り。
本肢のように公務員ではない者による犯行の場合は、外形理論をもっても「公務員が、その職務を行うについて」には含まれないと解されている。
なお、外形理論における重要判例である最判昭和31年11月30日は、本肢と非常に似た事案ではあるが、当該判例は非番の警察官による犯行である。
外形理論とは?
職務執行行為そのものには属しなくとも、その行為が、客観的に職務執行の外形をそなえる場合は、職務の範囲内の行為に属すると捉えて、それによって被害を受けた者を保護する理論。外形標準説とも呼ばれる。
3.誤り。
被害者は賠償請求できる場合もある。
「国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が・・・中略・・・肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする」(最判平成9年9月9日)
なお、判例は本肢の事案について、国家賠償請求ができる場合を限定的・例外的なケースにとどめているため、本肢は原則論に沿って考えれば正しいようにも映る。
特に、本問では、肢4が原則論で考える問題であるため、一層そのように映るといえよう。
しかし、本肢は、理由部分にも問題点があるため、正しいとはいえない。
判例・通説である「国会における発言等により被害を被った者の国家賠償請求は、限定的にではあるが可能である。」とする見解は、国会議員の法的責任が免責されても、その違法性までもが阻却されるわけではないということを前提にしており(違法性が阻却されるならば、限定的であっても国家賠償請求ができない。)、当該判例でもその限定される理由については、憲法第51条により国会議員の法的責任が免責されることを直接的な理由とはしてない(免責特権は国会議員の職務行為についての広い裁量の必要性を裏付けていると述べるにとどまる)。
他方で、本肢のように国家賠償請求できない理由を「憲法51条により国会議員の法的責任は免責されるため、」とすると、国会議員の法的責任が免責されれば、その違法性までもが阻却されるという見解から述べていることになり、被害者は例外なく国家賠償法1条に基づく損害賠償を求めることができないことになってしまう。
したがって、本肢は理由部分が暗に「常に」「いかなる場合も」等の例外を排除する役割を持つため、誤りとなる。
4.正しい。
消防職員の消火ミスに係る火災の再燃について判例は「公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法四条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。」としている(最判昭和53年7月17日)。
なお、本肢は、原則論に沿って考えれば、正しいということになるが、公務員(消防職員)に重大な過失があれば、損害賠償を求める余地があるため、本来であれば問題設定で、消防職員に重大な過失がないことを入れておくべきであろう。
5.誤り。
パトカーによる追跡中の事故について判例は「追跡行為が違法であるというためには、右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要するものと解すべきである。」(最判昭61年2月27日)とし、国家賠償請求が認められる要件を示しているため、本肢のように「もっぱら憲法29条に基づく損失補償による」とはいえない。


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