解答 行政書士試験 平成18年6問
憲法
○:5.憲法改正には限界があり、この憲法が保障する基本的人権を憲法改正手続によって削除することは、論理的に許されないとするのが、通説である。
○:5.憲法改正には限界があり、この憲法が保障する基本的人権を憲法改正手続によって削除することは、論理的に許されないとするのが、通説である。
問6 次の条文の下線部【1】~【5】についての記述として、妥当なものはどれか。
第11条 【1】国民は、すべての【2】基本的人権の享有を妨げられない。【3】この憲法が国民に【4】保障する基本的人権は、侵すことのできない【5】永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.憲法13条以下で保障される諸権利のなかで、明示的に「国民」を主語としている権利については、日本に在留する外国人に対して保障が及ばないとするのが、判例である。
☓:2.国家権力の統制下にある在監者に対しては、新聞、書籍を閲読する自由は、憲法上保障されるべきではないとするのが、判例である。
☓:3.「この憲法」のなかには、日本国憲法のほかに、世界人権宣言や国際人権規約も当然に含まれるとするのが、判例である。
☓:4.「学問の自由は、これを保障する」と規定する憲法23条は、大学に対して、固有権としての自治権を保障したものであるとするのが、通説である。
○:5.憲法改正には限界があり、この憲法が保障する基本的人権を憲法改正手続によって削除することは、論理的に許されないとするのが、通説である。
解説
1.誤り。
外国人は憲法第3章で規定された基本的人権の保障の対象となると肯定した場合に、憲法第3章で規定された基本的人権のうち、どのような人権が外国人に保障されるかについては、憲法の文言を重視する文言説と権利や自由の性質に応じて判断する性質説がある。
この点、判例は、「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」とし、性質説に立っている(マクリーン事件:最判昭和53年10月4日)。
したがって、文言説を述べる本肢は誤りである。
2.誤り。
未決拘禁者の新聞紙閲読の自由が問題となった事件について判例は「意見、知識、情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであり、また、すべて国民は個人として尊重される旨を定めた憲法一三条の規定の趣旨に沿うゆえんでもあると考えられる。」としている(よど号ハイジャック新聞記事抹消事件:最大判昭和58年6月22日)。
なお、当該判例の結論としては、閲読を許すことにより、監獄内の規律及び秩序の維持上放置することができない程度の弊害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要な場合は、新聞等の閲読の自由を制限することは認められるとして、新聞記事を一部墨で塗リ潰して配布したことに対する損害賠償請求を棄却している
3.誤り。
世界人権宣言や国際人権規約が「この憲法」に当然に含まれると判示した判例は存在せず、このことについて正面から言及した判例自体は見当たらない。
もっとも、学説上は、「この憲法」とは、日本国憲法を指すもので、世界人権宣言や国際人権規約は含まれないと解している。
なお、日本国民がこれらの規定の適用を受けることはありうるが、それは憲法第98条が日本国が締結した条約及び確立された国際法規の遵守義務を定めて、国際協調主義を採用しているという観点からである。
4.誤り。
憲法23条の「学問の自由」に大学の自治が含まれることは通説及び判例ともに認めているが(東大ポポロ事件:最判昭和38年5月22日)、大学の自治は大学の固有権として直接的な権利として保障しているのではなく、制度的保障であると解している。
なお、制度的保障とは、一定の客観的制度の保障を定め、間接的に人権を保障しようとする憲法における人権保障理論の一つで、この場合、大学の自治という制度を保障することによって、学問の自由を保障している。
5.正しい。
憲法第96条には、憲法改正手続きが規定されているところ、論理的には、この手続きさえ経れば、いかなる改正をすることも可能と解することもできる(憲法改正無限界説)。
しかし、通説は、憲法改正には限界があり改正しても同一性が維持されなければいけないとしており、憲法の基本三原則と呼ばれる「基本的人権の尊重」「平和主義」「国民主権」を否定するような変更はすることができないとする(憲法改正限界説)。
したがって、基本的人権規定を削除することは基本的人権尊重主義の趣旨に反するため、本肢が言うように許されない。
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