解答 行政書士試験 平成25年14問
行政法 行政不服審査法
○:4.行訴法は、訴訟の結果により権利を害される第三者の訴訟参加に関する規定を置いているが、行審法は、利害関係人の不服申立てへの参加について明示的には定めていない。
○:4.行訴法は、訴訟の結果により権利を害される第三者の訴訟参加に関する規定を置いているが、行審法は、利害関係人の不服申立てへの参加について明示的には定めていない。
問14
行政不服審査法(以下「行審法」という。)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の比較に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.行訴法は、行政庁が処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟として「義務付けの訴え」を設けているが、行審法は、このような義務付けを求める不服申立てを明示的には定めていない。
☓:2.行審法は、同法にいう処分には公権力の行使に当たる事実上の行為で継続的性質を有するものが含まれると定めているが、行訴法は、このような行為が処分に当たるとは明示的には定めていない。
☓:3.行訴法は、取消訴訟の原告適格を処分等の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に認めているが、行審法は、このような者に不服申立て適格が認められることを明示的には定めていない。
○:4.行訴法は、訴訟の結果により権利を害される第三者の訴訟参加に関する規定を置いているが、行審法は、利害関係人の不服申立てへの参加について明示的には定めていない。
☓:5.行訴法は、取消訴訟における取消しの理由の制限として、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とすることはできないと定めているが、行審法は、このような理由の制限を明示的には定めていない。
解説
1.正しい。
行政事件訴訟法は、平成16年の改正で、それまで無名抗告訴訟であった義務付け訴訟と差止め訴訟を抗告訴訟の類型に加えた(行政事件訴訟法第3条6項)。
一方、行政不服審査法では、このような不服申立類型を明示的には定めていない。
なお、行政不服審査法の改正案では、義務付けや差止めの救済形態の導入が検討されている。
2.正しい。
行政不服審査法第2条1項は、「この法律にいう「処分」には、各本条に特別の定めがある場合を除くほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの(事実行為)が含まれるものとする。」として、処分に事実行為が含まれることを明示している。
一方、行政事件訴訟法では、このような事実行為が処分に含まれることは明示していない。
もっとも、解釈としては、行政事件訴訟法の処分にもこのような事実行為も含まれると解されている。
3.正しい。
行政事件訴訟法第9条1項は、取消訴訟の原告適格として「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。」と定めている。
一方、行政不服審査法は、処分についての不服申立適格について「行政庁の処分に不服がある者」(行政不服審査法第4条1項)と定めるだけで、処分を受けた本人以外の申立てを認めているかは、明示的に定めていない。
もっとも、判例は、「行政庁の処分に不服がある者」とは、「不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」(主婦連ジュース訴訟:最判昭和53年3月14日)としており、当該判例により、行政不服審査法の不服申立適格は、行政事件訴訟法における原告適格と同義であると解されている。
4.誤り。
行政事件訴訟法は「裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもって、その第三者を訴訟に参加させることができる。」(行政事件訴訟法第22条1項)として、第三者の訴訟参加の規定を置いている。
一方、行政不服審査法でも、「利害関係人は、審査庁の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加することができる。」(行政不服審査法第24条1項)や、「審査庁は、必要があると認めるときは、利害関係人に対し、参加人として当該審査請求に参加することを求めることができる。」(行政不服審査法第24条2項)として、利害関係人の不服申立参加の規定を置いている。
したがって、本肢は、「行審法は、利害関係人の不服申立てへの参加について明示的には定めていない。」としているため、誤っている。
なお、行政不服審査法の前身法である訴願法では、利害関係人の不服申立参加に関する規定はなかったので、改良点の一つである。
5.正しい。
行政事件訴訟法では、「取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。」(行政事件訴訟法第10条1項)として、取消しの理由の制限をしている。
例えば、Aにされた不利益処分に、Bの利益を保護するための手続を欠くという違法があっても、Aはその違法を主張して当該処分の取消しを求めることはできない。
一方、行政不服審査法は、このような理由の制限を明示的には定めていない。
なお、救済の必要性という観点からは、明示されていなくても必然的にこのような理由は制限されると解することもできるが(実際、行訴法の前身法では規定はなかったが、学説上は制限されると解されていた)、行政不服審査法には自己統制機能があるため、制限されないという考えも有力である。
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