解答 行政書士試験 平成25年32問
民法債権
○:2.二つ
○:2.二つ
問32 Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。
ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。
イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。
ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。
エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。
オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.一つ
○:2.二つ
☓:3.三つ
☓:4.四つ
☓:5.五つ
解説
ア.誤り。
当事者は時効を援用することができるが(民法第145条)、本肢のCは、ここにいう「当事者」として、B所有の甲土地についてAの所有権の時効取得の援用ができるか否かが問題となる。
この点について判例(最判昭和44年7月15日)は、借地上の建物の賃借人は、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することができないとしている。
したがって、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することはできない。
イ.正しい。
賃貸中の不動産を譲り受けた者が、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗するには、登記が必要であるため、その登記無くして賃料を請求することはできない(最判昭和49年3月19日)。
したがって、本問のBは、乙建物について移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。
なお、譲受人(本肢のB)が登記を備えていない場合でも、賃借人(本肢のC)がその者を賃貸人であると認めて賃料を支払ったときは、有効な弁済となる(最判昭和46年12月3日)。
ウ.誤り。
本肢は、土地上の建物の賃借人Cは、土地の所有者Bに土地の賃料を第三者弁済できるか否かという問題である。
この点、利害関係を有する第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができるが(民法第474条2項の反対解釈)、借地上の建物の賃借人は、敷地の地代の弁済について、ここにいう利害関係を有する第三者に該当する(最判昭和63年7月1日)。
したがって、CはAに無断で甲土地の賃料をBに支払うことができる。
エ.正しい。
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができないが(民法第612条1項)、賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合は、特別の事情のない限り、売主は、買主に対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したことになるため、その賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得る義務を負うことになる(最判昭和47年3月9日)。
したがって、AがCに対して、乙建物を売却するには、Bの承諾が必要である。
オ.正しい。
土地の賃借人と土地賃貸人との間において土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特別の事情がないかぎり、その効果をその土地上の建物の賃借人に対抗できない(最判昭和38年2月21日)。
したがって、BはCに対して建物の明渡しを求めることはできない。
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