行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成25年5問

憲法

○:4.一般性・抽象性を欠いた個別具体的な事件についての法律(処分的法律)であっても、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解も有力である。


問5

権力分立に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.アメリカでは、国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙されるが、権力分立の趣旨を徹底するために、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。

☓:2.政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになり、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった。

☓:3.伝統的には、議会の立法権の本質は、国民に権利・利益を付与する法規範の制定であると考えられてきたが、行政国家化の進展とともに、国民の権利を制限したり義務を課したりするという側面が重視されるようになった。

○:4.一般性・抽象性を欠いた個別具体的な事件についての法律(処分的法律)であっても、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解も有力である。

☓:5.君主制の伝統が強く、近代憲法制定時に政府と裁判所とが反目したフランスやドイツでは、行政権を統制するために、民事・刑事を扱う裁判所が行政事件も担当してきた。

解説

1.誤り。
アメリカでは、国会議員は国民によって直接選挙されるが、執行府の長である大統領は間接選挙によって選出される。
また、アメリカの大統領制では、議院内閣制として比較して、大統領と議会が厳格な権力分立の原則を貫いているため、議会は大統領の不信任を議決することができないし、大統領は議会の解散権、法案の提出権のいずれも有していない(ただし、議会が可決した法案の拒否権は有している)。
したがって、「執行府の長・・が国民によって直接選挙される」としている点と、「大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。」としている点が誤りである。
2.誤り。
政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになるという点は正しい。
しかし、この場合、議会の多数党と内閣は、密接な関係になって馴れ合いが生じるため、内閣不信任案の可決は見込めず、この方法による責任追及の仕組みは機能しなくなる。
3.誤り。
伝統的には、立法権の立法とは、国民の権利を制限したり義務を課したりする法規範のことで(一般的権利制限説)、その制定が立法権の本質であると考えられてきたが、貧富の差による貧しい人々を救うことを重視した福祉国家の思想の下、行政国家化が進展すると、国民に権利・利益を付与という側面が重視されるようになった。
したがって、本肢は、法規範の性質の歩みについて、説明が逆になっている。
4.正しい。
本来、法律は、一般性(法の受範者が不特定多数人であること)と抽象性(適用される事件が不特定多数であること)を有することが求められるが、これらの要件を欠いた個別具体的な事件を対象にした行政処分的な法律が制定される場合があり(例えば、「学校法人紛争の調停等に関する法律」(下記参照))、この法律を処分的法律や措置的法律と呼ぶ。
この点、本来、個別具体的な措置は行政権に属するため、三権分立の観点から考えると問題が生じるし、また、対象者にしてみると狙い撃ち的な法律になりうることから平等原則に違反するという問題も生じる。
しかし、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解が有力である(法律の一般性説)。
5.誤り。
大陸法系であるフランスやドイツでは、行政優位の法運用体制がとられており、行政内部での監督統制を重視するために、司法裁判所とは別に行政裁判所が設置されている。
なお、日本においても、以前は、ドイツ・フランスなど大陸法をモデルに継受していたため、大日本帝国憲法では行政裁判所制度が導入されていたが、現憲法は英米法系の影響を強く受けているため、司法権から独立した形での行政裁判所は設置できないことになっている(憲法第76条2項)。


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