解答 行政書士試験 平成25年31問
民法債権
○:5.ウ・オ
○:5.ウ・オ
問31 契約の解除に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。
イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。
ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。
エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。
オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・エ
☓:2.イ・ウ
☓:3.イ・オ
☓:4.ウ・エ
○:5.ウ・オ
解説
ア.妥当でない。
本肢の場合、債務者(A)の不始末により履行が不能となったのであるから、履行不能に基づく契約の解除ということになる(民法第543条)。
履行不能の場合における契約の解除では、履行期が到来しても何も事情に変化がないから、履行期を待つ必要はない。
したがって、「Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない」とする記述は妥当でない。
イ.妥当でない。
本肢は、引渡し期日の到来にかかわらず、建物の引渡しがなされていないのであるから、履行遅滞である(民法第412条)。
履行遅滞の場合、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約を解除することができるとされているが(民法第541条)、相当期間を定めずに催告しても、催告から相当期間を経過すれば解除することができる(大判昭和9年10月31日、最判昭和44年4月15日)。
したがって、本肢の「Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告しなければ、当該売買契約を解除することはできない」とする記述は妥当でない。
ウ.妥当である。
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみすることができる(民法第544条1項)。
これを解除不可分の原則という。
したがって、売主が2名である本肢において買主が解除するためには、買主の一方(本肢ではA)に対してのみ解除の意思表示をするだけでは足りない。
エ.妥当でない。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない(民法第545条1項)。
このただし書の第三者として保護されるためには、善意・悪意は問わないが、権利保護要件としての対抗要件が必要であり(最判昭和33年6月14日)、本問では、不動産(土地)であるから登記が対抗要件となる(民法第177条)。
したがって、「C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cはこの土地の所有権を主張することができる」とする記述は妥当でない。
オ.妥当である。
他人物売買契約において売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができるが(民法第561条)、他方で、当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う(民法第545条1項本文)。
本肢では、AC間の売買契約が解除されたのであるから、AC間の契約は初めからなかったことになり、Cにも原状回復義務が生じ、その内容として、給付された物から生じた使用利益も返還する必要がある(最判昭和51年2月13日)。
したがって、本肢では、CはAに自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。
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