行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成25年2問

基礎法学

○:3.イ・ウ


問2 司法制度改革審議会の意見書(平成13年6月公表)に基づいて実施された近年の司法制度改革に関する次のア~オの記述のうち、明らかに誤っているものの組合せはどれか。

ア 事業者による不当な勧誘行為および不当な表示行為等について、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が当該行為の差止めを請求することができる団体訴訟の制度が導入された。
イ 一定の集団(クラス)に属する者(例えば、特定の商品によって被害を受けた者)が、同一の集団に属する者の全員を代表して原告となり、当該集団に属する者の全員が受けた損害について、一括して損害賠償を請求することができる集団代表訴訟の制度が導入された。
ウ 民事訴訟および刑事訴訟のいずれにおいても、審理が開始される前に事件の争点および証拠等の整理を集中して行う公判前整理手続の制度が導入された。
エ 検察官が公訴を提起しない場合において、検察審査会が2度にわたって起訴を相当とする議決をしたときには、裁判所が指定した弁護士が公訴を提起する制度が導入された。
オ 日本司法支援センター(法テラス)が設立され、情報提供活動、民事法律扶助、国選弁護の態勢確保、いわゆる司法過疎地での法律サービスの提供および犯罪被害者の支援等の業務を行うこととなった。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

☓:2.ア・オ

○:3.イ・ウ

☓:4.ウ・エ

☓:5.エ・オ

解説

ア.正しい。
従来の消費者契約法では、被害を受けた消費者個人を救済することはできたが、それ以外又はそれ以後の消費者の救済や未然防止対策については、何ら対応がされていなかった。
そこで、平成19年改正により、消費者団体訴訟制度を規定し、一定の要件を満たした上で、内閣総理大臣の認定を受けた消費者団体(適格消費者団体)は、消費者契約法に関連する契約トラブル行為(不実告知、断定的判断の提供等)を多数起こしている又はそのおそれのある事業者等に対して、差止請求をすることができるようになった(消費者契約法第12条以下)。
イ.誤り。
本肢は、アメリカ等の英米法圏で採用されているクラスアクション制度と呼ばれるもので、我が国でもその検討はされているが、導入には至っていない。
我が国における多数当事者による訴訟形態としては、民事訴訟法上において共同訴訟(複数人が共同して訴訟)と選定当事者(複数人の訴訟において訴訟当事者を選定して訴訟)の制度があり、後者はクラスアクション制度と共通点も多い。
しかし、選定当事者制度はあくまでも同意を得た者達の間で選定し訴訟をしているのに対し、クラスアクション制度は、当該集団に属する者の全員が受けた損害について、事前同意なくして一括して損害賠償を請求できる(判決の拘束を受けたくなければ自ら除外を申し出ておく必要がある)という点で大きく異なっている。
なお、肢アの適格消費者団体は、差止請求ができるだけで、損害賠償請求までは認められていない。
ウ.誤り。
審理が開始される前に事件の争点及び証拠等の整理を集中して行う制度は、民事訴訟および刑事訴訟のどちらにも存在するが、公判前整理手続は刑事訴訟における制度であり(基本的に「公判」は刑事訴訟の審理を指して使う用語である)、裁判員制度の導入をにらみ、刑事裁判の充実・迅速化を図るため、平成17年の刑事訴訟法改正によって導入された手続である(刑事訴訟法第316条の2以下)。
刑事訴訟法第316条の2第1項
裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。
一方、民事訴訟における当該制度は、争点及び証拠の整理手続と呼ばれており、昭和の終わりから平成の初めにかけて導入(本格的導入は平成8年)されたものであり、司法制度改革審議会の意見書(平成13年6月公表)に基づいて実施された司法制度改革ではない。
したがって、民事訴訟については、「公判前整理手続」と呼ばれていない点並びに導入の時期及び背景が違う点で誤っている。
エ.正しい。
検察審査会とは、検察官の起訴の権限の行使に民意を反映させ、また、不当な不起訴処分を抑制するために、公職選挙法上における有権者から無作為に選出された11人によって構成されている機関で、地方裁判所又はその支部の所在地に設置されている。
従来の制度では、起訴するかどうかの最終的な判断は、検察官に委ねられており、検察審査会が起訴議決を決定することは認められていなかったが、平成21年5月の検察審査会法改正によって、起訴議決制度が導入されたため、2度の検察審査会の審査を介して最終的に「起訴をすべき議決」(起訴議決)がされた場合は、原則として裁判所が指定した指定弁護士によって、公訴が提起される(検察審査法第41条以下)。
オ.正しい。
従来、法的なトラブルがあっても法律専門職に相談するのは容易ではなく、特に過疎地ではそれが顕著であった。
そこで、法律専門職によるサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援(総合法律支援)を推進するため、司法制度改革の一環として総合法律支援法が制定され、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的として、同法に基づいて日本司法支援センター(法テラス)が平成18年に設立された。
なお、法テラスの具体的な業務としては、以下があり、本問ではこのうち1号~5号が述べられている。
業務内容総合法律支援法第30条1項
裁判制度や法律専門職に関する情報提供活動同項1号
民事法律扶助同項2号
国選弁護の態勢確保同項3号
司法過疎地での法律サービスの提供同項4号
犯罪被害者の支援同項5号
法律関係者の連携の確保や強化同項6号
支援センターの業務に関する講習や研修の実施同項7号
上記の付帯業務同項8号


この問題の成績

  • まだ、データがありません。


  • 試験過去問題の使い方

    平成30年までの行政書士試験問題の過去問を掲載しています。

    問題の解答ボタンの順番が、毎回ランダムで移動するので正解番号を覚えてしまうことを防止できます

    過去問ドリル使い方

    法令、一般知識のほか、法令につては(基礎法学、憲法<総論、人権、統治、財政>、行政法<行政手続法行政指導、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法>、民法<総則、物件、担保物件、債権>、商法、会社法、)などジャンルから選択するか、試験出題年度を選択してください。

    問題文章の後に選択肢が表示されるので、文章をタッチして解答してください

    解答画面では、過去6ヶ月間の解答について、履歴を表示するとともに、ユーザー全体の正解率を表示します。


    過去問を使った学習のヒント

    行政書士試験の本番時間は、3時間(180分) 法令46問、一般知識14問の合計60問が出題されます。

    1問あたり3分180秒で解答すれば間に合う計算になります。しかし、実際には、記述はもちろん、多肢選択、一般知識の文章読解問題は長い問題文を読んでいるだけで3分以上かかる場合もあるので180秒より速く解答する必要があります

    重要!毎日三時間用意する

    1問あたり100秒で解く(おおよそ半分の時間で一周できます)

    じゃあ残った時間は何をするのか?→解答を見る前に必ず見直すようにしてください。(回答時に自信がある問題、ない問題の目印をつけておくなど)


    過去問ドリルに取り組む前に

    一通りテキストを読み込んでから取り組みましょう。

    どの年度でもいいので初回60問といて、94点未満以下の場合はもう一度テキストを読み込む作業に戻りましょう

    300点満点中の180点取れれば合格ですので、目安として94点以上であれば、本格的に過去問ドリルに取り組んでみてください。