解答 行政書士試験 平成20年7問
憲法 憲法総論
○:2.98条2項や前文を根拠として、条約は、一般的に国内法として受容される。
○:2.98条2項や前文を根拠として、条約は、一般的に国内法として受容される。
問7
次の記述のうち、憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」から導かれる考え方として、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.確立された国際法規は、条約が自動執行力をもつ場合に限って、国内法的効力を有する。
○:2.98条2項や前文を根拠として、条約は、一般的に国内法として受容される。
☓:3.当事者が人的に法律を異にする国の国籍を有する場合には、当事者に最も密接な関係のある法律を当事者の本国法とする。
☓:4.最高裁判所の判例の考え方によれば、違憲審査の対象は国内法に限られるから、条約に対する違憲審査は認められない。
☓:5.条約は、国会によって国内法に変型されることによってはじめて、国内法としての効力を有する。
解説
1.妥当でない。
一元論(=憲法第98条2項)から導けば、確立された国際法規は、条約が自動執行力(国内法として自動的に執行される効力)をもつか否かにかかわらず、国内法的効力を有することになる。
したがって、「自動執行力をもつ場合に限って、国内法的効力を有する。」とするのは、妥当でない。
2.妥当である。
一元論(=憲法第98条2項)から導けば、同規定は、日本国が締結した条約を国内法上遵守すべき法的義務を課しているとを明らかにしていると解釈できるから、条約は一般的に国内法として受容されることになる。
3.妥当でない。
本肢は、当事者が人的に法を異にする国の国籍を持つ場合の準拠法の特定についてであるが、これは一元論(=憲法第98条2項)から直接導かれる事柄ではない。
なお、通則法第40条では「当事者が人的に法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある法)を当事者の本国法とする。」としている。
4.妥当でない。
本肢は文中で「違憲審査の対象は国内法に限られる 」としているが、一元論(=憲法第98条2項)では、条約は国内法として受容されるため(肢2参照)、文中の考え方に沿って、一元論から導けば、その結論は、条約も違憲審査の対象になるはずである。
しかし、本肢の結論は「条約に対する違憲審査は認められない。」としているため、一元論からは導けない考え方である。
なお、本問は特に判例の趣旨を問うてるわけでないが、実際の判例では、日米安全保障条約について「主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査の原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。」(砂川事件:最判昭和34年12月16日)として、一見してきわめて明白に違憲無効と認められる場合は、対象になることを示している。
5.妥当でない。
一元論(=憲法第98条2項)から導けば、条約は国内法として受容されるため(肢2参照)、国際法の国内実施のために、別個に国内法の立法措置(=変型)がされていなくても、国内法としての効力を有することになる。
なお、二元論によれば、国際法に国内的効力を認めてないため、原則として変型が必要となる。
この問題の成績
まだ、データがありません。