行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成20年5問

基礎法学

○:5.ア・イ・ウ・エ


問5 国家機関の権限についての次のア~エの記述のうち、妥当なものをすべて挙げた組合せはどれか。

ア、内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある。
イ、最高裁判所は、実質的にみて、行政権を行使することがある。
ウ、衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある。
エ、国会は、実質的にみて、司法権を行使することがある。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・ウ

☓:2.ア・イ・エ

☓:3.ア・ウ・エ

☓:4.イ・ウ・エ

○:5.ア・イ・ウ・エ

解説

ア.妥当である。
本来、国会は国の唯一の立法機関(憲法第41条)であるため、内閣が立法権を行使することはできないが、内閣は政令制定権を有し(憲法第73条6号)、その行使が、実質的にみて、立法権を行使していることにあたる場合がある。
例えば、現行の栄典制度(国家や公共に対する功労者に対して、国家が、表彰して待遇・地位・称号などを与える制度。)は、明治時代に制定された褒章条例という法令を政令によって改正(昭和30年と平成14年)した形で行われているが、これは憲法41条の立法を限定的に解した場合に許容されるもので、このような規範の制定は、実質的に見れば、内閣が立法権を行使したことになる。
また、内閣は、法案を含む議案提出権が認められているが(内閣法第5条)、内閣を構成する政党は、基本的に衆議院の過半数を占めていることから、その法案を内閣の意向によるゴリ押しで成立させることも可能であり、その場合の法案提出は、実質的にみれば、立法権の行使ということができる。
イ.妥当である。
司法による行政作用の伴う権利を一般に司法行政権と呼ばれており、この権限は、明治憲法下では司法省(現在の法務省)の所管に属する行政事務であったが、現憲法下では、最高裁判所に属しており、それを行使することは、実質的にみて、行政権を行使していることにあたる。
例えば、最高裁判所が裁判所の職員を監督すること(司法行政監督権:裁判所法第80条1号)や、内閣が下級裁判所の裁判官を任命するにあたり、最高裁判所が下級裁判所の裁判官を指名し、その名簿の作成すること(司法府の人事行政権:憲法第80条1項)などである。
ウ.妥当である。
両議院は、所属議員の資格に関する争訟を裁判権を有するため、衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある(憲法第55条)。
エ.妥当である。
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するために、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設置するが(憲法第64条)、この作用は、実質的にみて、司法権を行使することにあたる。
なお、本肢については、国会の権限に属するのは、弾劾裁判所を設けることだけであって、弾劾裁判所自体は国会から独立した機関なので(故に閉会中も活動できる)、厳密には国会が司法権を行使しているとはいえないのではないか?との指摘もされる。
この点については、組織法的観点から大きく分類し、弾劾裁判所は司法府に属する機関として捉えての出題と説明するか、弾劾裁判所の設置自体を実質的にみて司法権の行使と捉えての出題と説明するか、両議院で組織された訴追委員会が、裁判官の罷免を訴追すること(国会法第126条、裁判官弾劾法5条以下)を実質的にみて司法権の行使と捉えての出題と説明することになろうか。
もっとも、選択肢の組み合わせの観点から、本肢は必ずしも判断しなくても正解にたどり着けるため、難問化させるべくあえて判断が困難な肢を混入させたというのが出題者の本当の狙いなのかもしれない。


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