行政書士試験 平成25年60問
一般知識 文章理解
問60 本文中の空欄に入る言葉として適当なものはどれか。
DNAの二重らせん構造を初めて知ったときに誰もが感心するのは、これが親から子に間違いなく同じものを伝えていく性質をもっているということです。しかし、私は最近、DNAが生きものの基本物質になったのは、同じものを伝えていくということよりも「 」ではないかと思うようになりました。
DNAに関しては、複製とかコピーという言葉が使われますが、現実にはDNAはまったく同じものを作るようにはできていません。(中略)
DNAが次のDNAを作るときには、必ずどこかで間違えます。間違っても、生きていますよというメッセージが失われないかたちで間違えられるからこそ、三十八億年もの間続いてきたのです。それは、生きているという表現が多様なかたちを取り得るからです。もしこれがとても制限されていて、こうなったらもう生きられない、あれではだめだとなっていたら、こんなに長い間生きものが続くことはできなかったでしょう。生きもののすごいところは、長く長く続いてきたことであり、それはさまざまなものを皆生きものだ、それぞれ生きられるんだと認める原則を取ったからです。それを現実にしたのがDNA(ゲノム)です。
もちろん、遺伝子がうまくはたらかなくなって病気に苦しむこともあり、その原因を調べて治療法を探ることは一人ひとりの生を支える大切な技術です。(中略)
現代社会では糖尿病で悩む患者は多いので、その原因を知り、治療法を開発することは必要ですが、糖尿病の遺伝子があるわけではありません。血糖値が高いという現象は、糖の代謝全体と関わり合うものですから、それに関わる遺伝子は多数あり、一つひとつの遺伝子は決して糖尿病のためにあるわけではなく、生きることを支えるためにあるのです。病気の遺伝子という言い方をしているうちに、体中に病気の遺伝子があり、それを全部調べ上げて一つひとつに対応しなければ健康に生きられないようなイメージが生まれてしまうのは、困ったことです。ここには、正常と異常という問題があります。まず、ゲノム解析をしたことで、本来機能しなかったり、環境によってうまくはたらかなかった りする遺伝子が存在することがわかってきました。ゲノム全体が“正常”と呼べる状態などないということです。ですから、特定の遺伝子についてだけ異常と決めつける方向へ進むのは賢明な対応ではありません。DNAは多様なかたちで生きられるようにできており、それは生きものとしては三十八億年、人類としては五百万年、現代人としては二十万年という長い時間の中で確立してきたシステムです。
(中村桂子「ゲノムが語る生命」より)
選択肢(タッチして解答 選択肢の表示順はランダムで変更されます)
3.あえて異常な状態を作り出すことで、より耐性の強い性質に変化していった結果だということ
5.遺伝子自体が、生きものが存在していく上で、必ずしも決定的な働きをしているわけではないということ
2.わずかずつ間違えながらも、すぐにそれを修復する機能が働き、新しいタイプを生み出していくこと
1.多くの遺伝子が正常に伝えられるよう、遺伝子相互が複雑に関わり合っているということ
4.変化をし、その変化をきちんと次に伝え、変化したものも生きるようにそれを支えていけること
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